まごころ ブロードキャスト

風風風虱

第1話

 朝起きたらお腹に違和感があった。

 見てみると変なものがついていた。


 おできか?


 ヘソの上の辺りに、細長い透明な目盛り板。その目盛り板の両側に丸いノブのようなもの。どこかで見たことある、と一瞬思ってからラジオだと思いついた。


 ラジオ。

 ポータブルの廉価版のラジオだ……


 いや、いや、いくらなんでも朝起きたらお腹にラジオっておかしすぎだろう。

 だからきっとおできだろ。ラジオに見えるおできだと思う。

 ほら、人間、三つの点を見ると人の顔に見えるっていうじゃないか。

 あれだよ。あれ。

 目盛りの両側に丸いノブ見たらラジオに見えるってそんな感じ? 知らんけど。


 とりあえずノブの一つに触ってみた。


 カチリと手応えがあった。


 クルクルと回りそうだ。


 回してみた。

 

 ザ――と微かな雑音(ノイズ)が聞こえてきた。

 どこからだろう、と耳を傾けたが良く分からない。ノブを回すとノイズは大きくなる。それにともない尻の穴がむずむずし始めた。

 それでノイズの出所が知れた。尻の穴からだ。

 

 尻からノイズが出るって本格的にやべぇな、と思いつつもう片方のノブに触ってみる。


 やっぱりこっちも回る。


 回してみると目盛り板についた赤い筋みたいなものが左右に動いた。


 チューナーってやつ、なのか?

 ひょっとしてどこかの放送が聞けたりして


 ちょこっと楽しい。


 動かしてみたらホワイトノイズが消えた。どこかのチャンネルにあったようだ。しかし、なにも聞こえない。


 なんだよ、なにも聞こえないじゃないか、と思った。すると尻の穴から『なんだよ、なにも聞こえないじゃないか』と声がした。


 おお、聞こえる、と思う。


 『おお、聞こえる』と尻の穴から声がした。


 ちょっと待て、これ俺の心の声じゃないのか?


『ちょっと待て、これ俺の心の声じゃないのか?』と尻の穴。


 やべぇよ、心の声が尻の穴から聞こえてくるよ


『やべぇよ、心の声が尻の穴から聞こえてくるよ』


 だだ漏れだよ

  

『だだ漏れだよ』


 まじか、やべえ……


『まじか、やべえ……』


 そ、そうだ、スイッチ切れば良いんだ……

 うおっ?!


『そ、そうだスイッチ切れば良いんだ……

うおっ?!






スイッチ   取れた…… 』

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