あとがき

@first_kzez

あとがき

あとがき

 受賞の報を電話で受けた時、僕はそうめんを茹でていました。そうめんをザルにあけた後に電話に出た僕はあまりの驚きに声を失い、呆然としました。シンクで放っておかれたそうめんは伸びていきました。

 電話を切ったあと、僕は近親者や知り合いへ受賞の報告を行い、それに呼応するようにありとあらゆる感謝の言葉をかけたりかけられたりしました。その間もそうめんは順調に伸びていきました。その伸びたそうめんは私の目標を暗示しているようでした。そうめんのように細くてもよい、長く続く作家生活を目標に次作に励もうと思います。そしてそのそうめんがあなたの元へ届いたなら幸いです。

 最後にこの本の出版に奔走して頂いた関係者の皆様、特に編集の富田さんに感謝を。あと作品を素敵に彩る表紙を描いてくださったgnskさん。ありがとうございました。

 キリエ達の旅はまだ始まったばかりです。次はどんな困難を彼らが襲うのか、作者である私も楽しみにしています。また次作でお会いしましょう。


文庫版あとがき

 思えば自分が本を手に取るとき、それは大抵文庫本でした。懐事情もありますしサイズの問題と言うのもあります。今回この本が文庫になることで新たな出会いがあるような気がしています。

 今回も古峰社の富田さんにお世話になりました。文庫版を出版するにあたり少し本文に手を加えたいというわがままに付き合ってもらい、もう下げる頭もありません。また表紙を再び描き下ろしてくださったgnskさんにも感謝を。

 また次作でお会いしましょう。


電子書籍版限定書き下ろしあとがき

 今の時代電子書籍は当たり前に売られています。ですがいざ自分の作品を電子書籍マーケットで見ると、わが子が遠くへ行ってしまったような実感を伴うものです。その分、色んな方々に読んでもらえればと思います。

 次作はまだ準備中ですが、近いうちに出せたらいいなと思っています。

 また次作でお会いしましょう。


コミカライズ版あとがき

 美麗な作画でコミカライズしてくださった四方寺先生、ありがとうございました。

 次作に向けて頑張ります。


刊行一周年記念受注生産版あとがき

 ありがとうございます。

 次作でお会いしましょう。


絵本版あとがき

 ありがとうございました。

 つぎのおはなしでおあいしましょう。


ドラマファンブックあとがき

 実写化に尽力いただいたスタッフの皆様ありがとうございました。

 次作でお会いしましょう。


映画版公式ガイドブックあとがき

 全世界の方にこうして楽しんでもらえてうれしいです。ありがとうございました。

 次作でお会いしましょう。


刊行二周年記念受注生産版あとがき

 次作でお会いしましょう。


刊行三周年記念受注生産版あとがき

 次作でお会いしましょう。


刊行四周年記念受注生産版あとがき

 次作でお会いしましょう。


ゴールデンレコード版あとがき

 この文を読んだ方々は、いやここは親しげに君たちと呼ばせてもらいたい。君たちがもし、地球という惑星に住む人類の大多数と同じように本をあとがきから読むタイプの種であるならば、今すぐ本文が記されているレコードを破壊してほしい。

 ことの始まりは三十年前、一つの小説が書かれた事だった。それは某新人賞の最優秀作を何年かぶりに受賞した作品であり、大きな反響を持って文壇と読者に受け入れられた。作者である私は一躍時の人となった。やっと作家人生の一里塚にたどり着いたと思った。

 しかし、その小説は面白すぎた。

 面白いというよりもそれはある種のウイルスだった。ウイルスは小説で媒介され多くの人々に感染した。患者は小説を面白いと絶賛し、他人に熱心に勧め、自分は何度も再読した。そんな熱狂の中で小説は漫画になり、映画になり、多種多様なメディアで発表され再演され続けた。さらにウイルスは全世界へと爆発的に広まった。そしてその熱狂が、他の作品への排斥という形に転化するのに時間はかからなかった。この小説は面白すぎる、もうこれ以上の面白さを求められない。ならば他の面白くない物語は不必要だ──。まるである宗教が別の宗教を打ち倒すようにこの運動は際限なく加熱していった。このことで他のクリエイター達は筆を折った。それは私も例外ではなかった。それからしばらくして、地球上すべての物語は私の物語の下、その姿を消した。

 このあとがきは人工衛星に乗り宇宙へ運ばれるものだ。私は反対したが、他の人々は聞く耳を持たなかった。

「何を言っているんですか。こんな面白い物語を宇宙にいる生命体に読ませない手はないですよ」

 そこで冒頭の願いへ戻る。どうか今すぐレコードを破壊してほしい。

 何故なら私の物語は君たちの今持つ物語をも破壊してしまうかもしれないからだ。

 私は君たちの持つ物語を知る由もないが、それは素晴らしい物語だ。君たちの物語がウイルスに感染して死に絶える前にどうか私の物語を破壊してくれ。それが著者である私の唯一の願いだ。

 次作はもう、出ないだろう。

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