黒く塗りつぶすことで、浮かび上がる希望

えんぴつで「あ」と書く時、通常はヨコ棒を引き、次にタテ棒を引き、タテ棒に重なるように豚のしっぽを書く。
この小説は、まわりを黒く塗りつぶし、浮かび上がらせるように「あ」を描いている。
ここで言う「あ」は、主人公の自己であり、人生であり、希望のようなもの、と私は読んだ。
では、塗りつぶされた黒は何なのかと言うと、主人公の、目も当てられない八年間と言えよう。

塗りつぶされた部分は読んでいてかなりつらい。
だからこそ、ラストの彩りが鮮やかなのだ。
それ支えているのは高い文章力の賜物であろう。
そして読後感は不思議と悪くない。

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