湯けむり旅館で幽霊騒ぎ
第23話 雪女の温泉宿
箱膳の並ぶ宴席の舞台に一人の少女が立っている。
新雪をつむぎ織ったかのような着物をまとい。
白銀の髪を背に流した彼女は、この世の者とは思えないほど美しい。
「一番! 雪女の雪華! 瓦割りやりまーす! あと彼氏募集中でーす!」
口を開いた少女は人並み外れた美しさを台無しにする発言を連発しはじめた。
本当のことを言っているのなら、なんともダメそうな雪女である。
舞台袖の壁には大きな紙が貼り付けられており『霊能力者の方へ雪女ショーの演出に危険はありませんので、攻撃しないでください』とデカデカと書かれていた。
「お~! やったれ~!」
「カエデさんったら、はしたないですよ!」
「は~い!」
自称雪女に宴席から合いの手を入れたのは、着物の上に
宴席には他にもオカルト部の面々が席に着いており、マイヤが甲斐甲斐しく問題児の世話を焼いている。
これはオカルト部の打ち上げ会なのである。
「とおーうっ!」
気合いと共に振り下ろされたチョップが氷の瓦を割り砕く。
「お~っ! 三枚いった~!」
「あんなに細腕なのに、流石は妖怪さんですね~!」
雪女としてはダメそうな芸だったが、観客達は大盛り上がり。
儚げな美少女のパワー系一発芸が受けたということであろうか。
宴席のショーとしては好評な模様である。
「おかしい……雪女って腕力は人と同じだったはず」
「きっとアレだよアリサ。あの雪女さんはよく訓練された雪女さんなんだよ!」
「そうなのかな?」
疑わしげに雪女を見つめたアリサは、近くの席でカニを攻略していたアゲハに質問する。外部指導員の彼女も打ち上げ会に参加しているのだ。
「本当にそうなの?」
「あの雪女は特別だよ。陰陽師が鍛えてるからね!」
「知り合い?」
「良いお客さんだよ! とんでもない脳筋だから、御札とか術具を高く買ってくれるんだ!」
「アゲハ先生が人のことを脳筋と言っても説得力が無いんよ~」
「私よりも絶対に脳筋だよ! だって「うわああああ!」ないんだから」
桃色巻き毛の少女ヒナタへの反論は、突然の叫びにかき消された。
ターンッと勢いよく開かれた
「雪華ちゃん! 宿のそこかしこから幽霊が出ちゃってるよ! 怖いぃ!」
「いや、あなたも雪女なんだから、幽霊くらい自分で追い払っちゃえば?」
「あ、現世暮らしが長いせいで忘れてました! あはは!」
「アイデンティティーを無くさないで!?」
思わぬ商売チャンスにニヤリと笑ったアゲハはゆっくりと立ち上がり、アイデンティティークライシスを起こしている雪女(仮)に手を差し伸べた。
「その幽霊トラブル! この私! 霊能力者・大部アゲハにお任せくださいっ!」
まったくもって商売魂たくましい巫女である。
和風ソシャゲみたいな世界の怪力乱神巫女はお金を稼ぎたい ランドリ🐦💨 @rangbird
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