我が親愛なる友、「富岡」君について

ミッカネズミ

我が親愛なる友、「富岡」君について

 さて、私の友人には「富岡」君なるものがいる。

 本来は山田君というのだが、私が勝手にそう呼んでいる。


 何故かって? それは、彼をよく知ればわかる。

 ほら、そこに彼がいるだろう。


 ああやって、恥ずかしげもなく、性懲りもなく、乙女たちを惑わし、何とかして彼女らと赤い糸を紡ごうと奮闘しているのだ。


 因みに、「富岡」君ではなくとも良かったのだが、歴史の教科書で覚えているのがそれくらいであったから、度し難いことなのだ。

 

 それにしても、月の初めも初めだというのに、彼はもう36協定に抵触する寸前ではないか? 彼の下で働く者達はきっと、彼の底なき欲望故にこき使われ、使い捨てにされている事であろう。

 私は彼らの人権を問いたいが、何分なにぶん彼らは人間ではない故、それは出来ぬ事だ。


 人に非ずんば、人権はあらず。


 何とも無常で、これほどまでに、この世の真理を突いた言葉があろうか?


 彼を見る度いつもそう思う。どうか彼らに救いの手が差し伸べられんことを。

 南無南無、南無三。


 ーーいや、待てよ。富岡君の手によって、彼らは結果として救われるのではないか?

 彼が乙女を手中に収めようが、収めまいが、過程はどうあれその結果は運命という上位存在によって決定づけられている事なのだ。


 あぁ、人間とは、なんとごうの深い生物なのであろうか! 

 お釈迦様よ。どうか、哀れな富岡君へ救いの糸を!


 南無南無、南無三。


 



 

 

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