◆正体不明◆
茶房の幽霊店主
第1話 素麺のざるの上
※(店主と友人の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
※※※※※
何回目かの引っ越し先は、山と水田、自然に囲まれた、スーパーや薬局まで歩くには遠く、少々不便なところでした。
部屋のすぐ横に広い農業用水路があり、春には桜の花びらが流れ、鯉が群れで登ってきます。
水面の反射光が部屋に入ってくるので明るいのですが、夏は熱気と眩しさへの対策で、吐き出し窓をしっかり遮光カーテンで防御していました。
その日。 仕事関係者のNちゃんとお昼にお素麺を食べていました、ほどなくして、夏野菜を持ってきてくれたJさんが合流し、三人で素麺とフライパンで作った揚げ出し茄子も一緒にいただいていました 。
取り皿から視線を上げると、テーブルの真ん中に置かれている 、素麺のざるより高い位置、顔のすぐ前で 小さな【光の粒】が左右に小さくプルプル揺れているのが見えました 。
羽虫のような小刻みな動き。
『なにこれ?』
大きさは1ミリにも満たない。自発的に強く光っているように見えます。
三人とも反射している物がないか着席したまま、一斉に頭を動かして探しましたが、光の元となるものが分からない。
反射にしては粒状で光が強く、空中で留まっている時間が長すぎる。
思い切って指でつまんでみることにしました。
何の感触もなく、その間も爪の上でプルプル揺れながら留まっています。熱も感じません。
誰かがレーザーポインターを使うにしても、出現したのは光の反射を受け止めるものがない空中。窓は遮光カーテン、ダイニングが接した部屋の外は用水路だけで通路はなく、人が入れば上がってこれない深さなのです。
もう片手で【粒】の周りをぐるっと手で遮っても、光の強さに変化はありませんでした。
『手で捕まえることはできないみたい』
※※※※※
はっ!としました。これは貴重な現象データになる!
急いで隣の部屋で充電していた携帯を取りに走り、戻った時、一瞬見失いそうになった【光の粒】がスーッと、 リビングに移動して素早くテレビの後ろへ。
裏側を確認しましたが光は消えていました。
『あ。逃した。残念!』
『別に害はないと思うけどな』
『ピカーっ!て、めちゃくちゃ光ってましたね。漫画のベル○ルクに出てくる妖精パッ○みたい!』
店主、Jさん、Nちゃん、この三人は 「見え方が違う」ので非常に珍しい事象でした。
これに加え、携帯(当時はスマホではないです)という媒体を通してデータとして収集できれば、検証対象として十分だったのですが。
一緒にいたJさんもNちゃんも根底は【否定したい派】。
日々平穏に暮らすため不可思議な現象を意識して避ける傾向があります。
ですので、こういった事象があっても冷静です。
Nちゃんが言っていた妖精(?)の線も探りながら後に手広く調べてみまして、恐らく【金の気】なのかと?
金霊(金玉、かねだま、かなだま)の類 ?
※(江戸時代・妖怪画集『今昔画図続百鬼』参照)
電離したイオンや電子、励起された原子が元の状態に戻る際、光を放つプラズマの線も探ったのですが、天候も晴れ。雨は降っておらず、雷雲も出ていなかったのです。
そもそも空中に結構な長時間、プラズマ現象が素麺のざるの上で起こるのでしょうか?起こっていたなら面白いのですけどね。
結局のところ、今も正体不明のままです。
※※※※※
【追 記】
上記は7年前の出来事で、
2025年11月2日に、昼間自宅のトイレに入って洋式便座に座っていた時、ふたたびこの【光の一粒】が現れ、『貧血を起こして目がチカチカしてるのか?』とじっと観察していたのです。前よりも大きく2ミリぐらい。空中で移動する後ろに尻尾の?のようなものが付いていました。非常に立体的です。
よく墓場に現れる火の玉の姿をご想像ください。
今の住まいは一軒家で7年前のハイツではありません。住所も隣の市に変っています。
トイレの明かり取りの窓から燦燦と日光が入っていたにも関わらず、その【光の一粒】は明らかにそれに勝る光量でを放っていて、右肩をかすめて背後に消えていきました。
何か意味があるのか?そんなことはわかりません。
しかし、なぜ、トイレに現れたのか?
厠(かわや)に現れるのは「祟り神」が多いと聞きますが、あの光から邪悪などは感じませんでした。
こういった意味不明な出来事は、急に起こって去っていくので書き留めるのにも苦労するのですが、今回は近々で再度現れたので書き記しておくことにしました。
いつかこの謎が解明できるかもしれませんので。
◆正体不明◆ 茶房の幽霊店主 @tearoom_phantom
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます