どうして可愛いの
J.D
どうして可愛いの
私は今、高校2年生なのですが、1年生の春からずっと、好きな子がいるのです。
彼女は朝倉美鈴といって、入学時にたまたま知り合い、今ではかなり息のあった親友です。
突然の告白で申し訳ありません。私は彼女に恋をしています。
今日だって、
「神奈ちゃん、これ見て!すっごく美味しいって今話題なんだけど」
そういって、パフェが美味しいと話題のカフェ・ナカモトという喫茶店の写真を見せてきた彼女の、ふわりと揺れたセミロングと、香る甘い匂いに魅せられて、半分話を聞いていないことがバレて怒られたばかりです。どうして話を聞いていなかったかは、バレていないのでセーフですが。
彼女は、割と活発な方で、スキンシップも多めなため、毎日鼓動が止まないのです。寿命を削る気なのでしょうか?心臓が「しんどいから意識するのもう少し我慢して」と言ってきますが、中々の難題です。
好き、大好き。本当に大好き。
私は、そこまで明るい方ではない、まぁそうですね、自分のことなのでやんわりと表現させていただくと、物静かな人です。
中学の頃は、そのせいで軽いいじめにもあっていました。そこまで深刻ではないですが、話しかけてもほとんど無視され、影でくすくすと笑われていました。
男子たちは、私をそういう目で見てくる人ばかりです。実際、女子が味方しないのをいいことに、私は彼らから酷い仕打ちを受けたのです(私は、勿論素敵な男性だっていらっしゃいますから、性差別をする気はありませんが───彼らほど、欲にまみれた穢らわしい生き物はそうそういないと思っています)。
そんな私に、初めての友達が出来たのです。それが彼女、美鈴です。
彼女は私の光です。色白の透き通る肌に、健康的な細身の体、アーモンド型のはっきりとした二重まぶたに真っ黒で吸い込まれるような黒髪。鈴の音のような、爽やかな声。
優しくて、思いやりがあって、どんなことにも興味を持ち、常にみんなの中心。
笑顔が、大好きなのです。あの可愛い笑顔が、何よりも大好きなのです。
そんな彼女は、私だけが唯一の親友だと言ってくれました。
最初は、そんなことは社交辞令だろうと聞き流していたのですが、他の子から、
「隙があったら神奈ちゃん語りするんだよね」
「どんな用があっても、神奈ちゃんが最優先って感じ」
と言われて、彼女がそこまで私を思ってくれていたと知り、とても強い罪悪感を覚えたこともありました。
彼女とこの前言ったテーマパークでは、ジェットコースターが苦手だと言う彼女が、「神奈ちゃんとジェットコースター乗りたい!」
と言い出して、結局終始私に抱きついてきていた挙げ句、その後も気持ち悪くなってお手洗い場でオロロン鳥していたこともありました。お馬鹿な人です。そんなところも、可愛くて仕方がないのです。
しかし、みなさんお察しかと思いますが、彼女は、男子人気もすごいのです。
そして彼女の方でも、どうやら好きな人が出来たとか。
名前は、ここでは伏せますが、バスケ部のエースだそうです。私は毛ほどの興味すらありませんが。
「神奈ちゃん、どうしよう・・・告った方がいいかな?どうしよう・・・でもフラれたら・・・・」
「・・・大丈夫だと思うよ。美鈴なら」
「・・・本当?神奈ちゃんが言うなら信じるよ」
私は、叶わぬ恋をしているのです。彼女は、男性が好き。私は、彼女が好き。初めから、矢印の向きが違うのです。
結局、彼女はそのエースと付き合いました。これでいいのです。彼女が幸せになって、私は親友として、これからも彼女と付き合い続ければそれで、
それで、よかった
はずなのです。
私は、大きな間違いを、犯しました。
彼女を家に呼び出し(その時は、家族は家にいませんでした。母が仕事に行っていますから)、我慢ができなくなった私はそのまま、彼女に、口づけをしました。
「神奈ちゃん、神奈ちゃんやめてっ・・・!」
その静止を、聞いていたら、そこで理性が働いていたら・・・。
5秒ほどして、私は、とんでもない過ちを犯したことに気づきました。
私は、彼女の魂を傷つけた、人間失格者になりました。
私は、彼女を置いて自分の部屋を飛び出し、そのまま駅に向かおうとしました。理由ですか?・・・・今までで、唯一対等に、思いやりを持って接してくれていた親友を、あろうことかあの穢らわしいと嫌っていた男子たちと同じような理由で、傷つけた者を、抹消するためですよ。
「待って、神奈ちゃん、待って!」
「・・・・・み、すず・・・」
後ろから追いかけてきた彼女が、私の名前を呼び、やがて私に追いつくと、両手で渡しを包み込み、私の頭に手を添えるようにして、抱きしめました。
「・・・・なん、で・・・み、すず・・・」
「神奈ちゃん、今何しようとしてた?」
・・・どうして、分かったのでしょうか?
「神奈ちゃんがやりそうなことは、大体分かるよ?・・・私は気にしてないから」
・・・そんなの、
「・・・うそだ・・・だって、すごくこわいってかおして」
「だってそりゃ、急にはびっくりしたけど、私ね、神奈ちゃんとキス出来て・・・嬉しいかはわからないけど・・・でもなんだか安心したの。なんでかわからないけど。でも、ずっと、私のこと好きでいてくれていたんでしょ?それでも、私の恋を応援してくれたんでしょ?・・・気づかなくてごめんね?私も、大好きだから、だからさ、今から、私たちだけの関係を作らない?」
「・・・私たちだけの・・・かんけい・・・?」
「そう、恋人でも親友でもない。世界で一つだけの、名前のない関係。そしたら、私たちはもっと特別になれるよ。神奈ちゃんだけが、私の特別になれる」
「・・・ほん・・・とうに?美鈴のこと・・・好きでもいいの・・・?あんなことしたのに、特別でいいの?」
「いいの。私も、神奈ちゃんだけとの関係が欲しい。だって、私神奈ちゃんが一番大好き。世界で一番可愛い神奈ちゃんが、一番好き」
・・・私は、許されたとは思っていません。けど、彼女の、きっと優しさなどではなく、本心が、そういってくれたのでした。
彼女は、そのあとも、私の部屋で、なんども「可愛い」「大好きだよ」と言いながら、私の頭を撫でてくれました。
ああ、本当に、もう、私は、彼女なしでは生きていけません。
なんて可愛いんでしょう?私の神奈ちゃんは。
少しツリ目気味の二重に、赤毛混じりの黒髪、私より少し低い身長からの、信じられないほど可愛い上目遣い。
彼女の過去は知っています。そして、母はシングルマザーであることも、ネグレクトを受けていることも。
彼女のような子は、依存体質になりやすいのです。今まで味方という味方がいなかったからこそ、優しく包容されると弱いのです。
彼女が私を好きだったのは、とうの前に知っていました。
でも私は、彼女とは恋人でもない、特別な関係になりたかったのです。
だから、偽の恋人を作りました。
正直、エースには何も興味はありませんでしたが、ここまで彼女が追い詰められ、私を襲ってくれるなんて・・・計画通りでなんて素晴らしいんでしょう!
ああ、可愛い神奈ちゃん・・・私だけの神奈ちゃん・・・。
彼女を思い出す度、私はあられもない欲求に苛まれていました。
すべて、あの子が可愛いのが悪いのです。でも、もう彼女は私のもの。誰にも手渡しはしません。
それにしても、
「「ああ、あの子はどうして可愛いの」」
どうして可愛いの J.D @kuraeharunoto
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