もけまるの非日常的生活(パラレル・ダイアリー)

@Romance-Yuu

第1章 異世界ダイブ

    第1話 目覚めたセカイ


現実世界から、切り離されたような、あたり一面が、色とりどりの花畑に囲まれ、大地には芝生が生い茂り、花畑の奥には、深い森が見えていて、少し離れた場所から、川のようなせせらぎの音が聞こえてきている。

  

 そんな自然豊かな場所で、一人の長髪をブロンドに染められた、白いドレスを着ている女性が、花畑の花粉に鼻がくすぐられる様に、可愛げなくしゃみをして、目を覚ました。


 「あれ……ここ、どこ?」


 目を覚ましたばかりで、少しかすれた、ただ、柔らかくピュアな声質が、まるで、その女性の純真な心の有り様を映し出しているかの様に聞こえてくる。

 聴いた人の心を、一瞬で、虜にさせるような声と表現しても、満更、過言ではない――。


 「お花……?こんなにたくさん咲いてる」

 「すごく綺麗! 」


 ゆっくりと、身体を起こした、ブロンド髪の女性は、綺麗なネイルアートを施された右手先で、一輪のピンクのチューリップを手に取った後、自分の周りに、咲き誇る、一面の花畑を見て、感嘆の声をもらした。


 そして、右手の爪に施された、ネイルアートを見つめると、ピンク色の桜がモチーフされていて、左手の爪も、同じ様にネイルがされていた。


 「桜のネイル……かわいい! 」 


 思わず、自分の爪に施された、ネイルアートに、つい、見惚れてしまうのだった。


 だが、花畑の奥に見えている、森の茂みが、大きく揺れたかと思うと、一匹の口の周りからおなかまでが白く、灰色ベースのウサギが飛び出してきた。

 そのウサギは、美麗な女性を見つめると、真っ赤な鼻をひくひくさせて、少しずつ、花畑の匂いを嗅ぎながら、近寄ってくる。


 「おいで! おいで! 」


 白いドレス姿に、ブロンド髪の女性は、ゆっくりしゃがみ込むと、手招きするかのように、野うさぎに呼びかける。

 それに、応えるように、うさぎが女性の膝元まで来ると、静かに丸まり、ゆっくり目を閉じて、心地よさそうに眠るのだった。


 その光景を見ながら、ドレス姿の女性は、ほほ笑んで、静かに、うさぎの背中を撫でるのだった。

 

 「でも……ここは一体どこなの?」

 「ダメ……なにも思い出せない……」

 

 だが、一体、この場所がどこなのかが、全く覚えていない、いや、思い出せないと表現すべきだろう――。

 そして、自身の名すらも――。


 「でも……なにか頭の中に流れてくる」


 だが、記憶などを思い出そうとすると、真っ暗なモヤモヤとした陰影がかかり、誰かの顔や、言葉が、イメージとして、薄っすらと呼び起こされるのだった。

 それでも、真剣に記憶を思い出そうとした、丁度、その時だ――。

 

 今まで、眠りについていた、灰色ベースの野うさぎが、目を開け、鼻をひくつかせ、両耳をピンと立てたのだ。

 まるで、なにかが起こる前兆を予知するかのように――。


 今まで、川のせせらぎの音が、小さく聞こえていただけだったのだが、花畑から、黒く靄々とした、摩訶不思議な物体が、スライムが勢いよく、揺れるかの様な音を立てながら、何体も現れたのだ。

 小さいネズミが二足歩行している様な物体、薄っぺらい一反木綿の様に宙を舞う物体、巨大なゴリラや、ゾウまでもが、二足歩行しながら、鎧を纏っている物体など、姿カタチまでもが違う、だが、明らかに目つきが鋭く、威嚇している様子が、女性にも手に取るように理解できたのだ。

 

 「何これ……!?どうしよう……」


 だが、女性には、どうする事も出来ず、ただ、野うさぎを抱えて、たじろぐしかなかったのだ。


 「ヴホォォォォオオオ!! 」

 

 そして、巨大なゴリラの様な鎧を纏った物体が、遠吠えをあげて、ドラミングをしはじめたのだ。

 それが合図だと言わんばかりに、真っ黒なその物体達が、数体、ドレス姿の女性と野うさぎ目掛けて、飛び掛ってくる。


 「もうダメ……! 」


 女性が目を閉じ、諦めかけた、その瞬間――。


 「五大元素にして、炎を司る古の剣よ! その姿を君臨させ、闇の使者を葬らん! バースト!!」


 落ち着いた、低めの男の声が、と魔法の様な呪文を唱えたかと思うと、突然、激しい熱気を感じたのだ。

 女性が恐る恐る、目を開くと、周りの景色が、と揺れているようにも見え、目の前には、燃え盛る大炎が、圧倒的な強さを見せつけ、襲い来る敵モンスターを一掃していたのだ。


 「……すごい炎、焼けるように熱い! けど、どこか温かい」


 感心しながら、目の前で燃え盛る色の業火を見つめながら、女性が優しい眼差しで、野うさぎを強く抱き抱えた。


 すると、後ろの方から、先程の落ち着いた男の声が、女性に呼びかけてきた。


 「お怪我はありませんか?姫! 」


 「え?いま、姫って……」


 姫と呼ばれるドレス姿の女性が、驚きながらも、くるりと後ろを振り返る。

 

 だが、そこに立っていたのは、銀の鎧を身に纏い、気高い騎士の様な格好をした、水色の髪の凛々しい顔立ちの青年だった。


 「えぇ、いかにも! 貴女はこのルミナス王国の王女、もけまる姫です」

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