エピローグ:新しい戦争の形
後日談として判明した事実は、涼の推測を裏付けるものだった。
感染経路はやはり、外部業者が持ち込んだ USB メモリだった。その業者の PC もまた、別の経路で感染していたのだ。
そして、Vortex(現実世界での名は Stuxnet)は、中東の核施設を標的に開発されたものだった可能性が高いと報じられた。しかし、一度ネットワークに放たれた生物兵器が制御不能になるように、それは国境を越え、無関係な日本の施設にも牙を剥いたのだ。
涼のオフィスには、今日もまた新たな依頼のメールが届いている。
重要インフラへのサイバー攻撃、IoT 機器の乗っ取り、自動運転車へのハッキング……。
デジタルの脅威は、現実世界への浸食を加速させている。
「さて、やるか」
涼はコーヒーを一口飲み、エディタを開いた。
画面の向こうには、まだ見ぬ脅威が潜んでいる。しかし、もう孤独ではない。
デスクの脇には、結奈と二人で撮った写真が飾られている。六ヶ所村からの帰りに撮った、少し照れくさそうな笑顔の写真だ。
たった一つのコードが物理を破壊し、たった一つのコードがそれを救う。
その紙一重の攻防の最前線で、三宮涼は今日もキーボードを叩き続ける。
愛する人を、そしてこの世界を守るために。
(終わり)
物理を破壊するコード - サイバー兵器の脅威 SFCA @wersec
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