後編

「すみません間違えました」

「待つでござる! もしかして拙者をお迎えに来てくれたでござるか!?」


 目の前のむごい光景を覆い隠そうとシーツに再び手を掛けたが、受付嬢がそれを制止した。


がくだんの忍者、シズキさんです」

「どう見ても全裸中年男性だろ。まともなのは俺だけか?」

「いいえ、よく見てください」


 受付嬢は俺の耳を引っ張って無理やり変態野郎を直視させた。いや何回見てもマフラーと頭巾だけ身に着けた全裸中年男性ですけど。


「マフラーと頭巾を身に着けているので忍者ですよ」

「マフラーと頭巾着けただけの全裸中年男性を忍者とするのは忍者に対する冒涜だろ」


 いや確かに不思議とその二つがあったら忍者っぽいけど、逆にそこ以外忍者な部分あった? あ、ござる口調は無しね。かつて俺とジェイドを賭け麻雀で身ぐるみひっぺがしたイカサマ生臭モンクもござる口調だったから。今のところ俺の中でござる口調使ってる奴は2分の2の確率で詐欺師だから。あ、身ぐるみひっぺがされたのは言葉の綾でね、パンツだけは返してもらったから。


「スタック殿とやら、人を見かけで判断するのは無礼でござろう」


 などと檻の中から無礼の塊がご意見陳述。厚顔無恥にも程があり。頭巾で顔覆ってるけど。


「マジでどこからツッコんだらいいのか分からないんだが……とりあえずシズキさんとやらは、え? 冒険者?」

「いかにも。この装束は、拙者の忍者としての戦闘スタイルによるものでござる」


 俺は早くもツッコむのに疲れて、受付嬢を睨んだ。受付嬢は軽く咳払いして忍者シズキの言葉を継いだ。


「彼女は軽装であるほど攻撃を回避しやすい特異体質だそうです。極東にある彼女の故郷では、そのような戦闘スタイルはありふれているようですね」

「スキルじゃなくて? 初耳ですけど」

「私もですけど」


 困ったように肩をすくめる受付嬢。そりゃそうだわな。個々の冒険者の来歴なんて自己申告でしかないし。

 確かに戦士系の職業だと【素肌剣術】とか【素肌攻め】みたいな、軽装であことによってボーナスを得られるスキルはある。けど、「素肌」って鎧を付けていない平服の状態ってことだからね。ガチのマジで文明の衣を脱ぎ捨てろだなんて誰が言ったよ。

 まぁ、確かめてみればいい。

 ステータス鑑定、と念じる。案の定、シズキの頭上にも「フレーム」が浮かんできた。


「……ん?」


 思わず目を凝らしてしまった。

 最大HP、攻撃力、そこまではいい。何ら装備を付けていないから、屈強そうな肉体の割にショボい数値だ。なんと、殴り合ったら純支援職の俺がギリギリ負ける程度だ。

 しかし、その下に続くステータス項目が、たった一つしかない。


「AC……?」


 AC-99。

 なんだこれ。


「スタック殿、乙女の裸体をそうまじまじと見つめるものではござらんよ」


 俺の凝視に気付いたシズキがくねくねとマッシブな上体を捩った。視界を占有する特大ノイズにステータス視認モードが途切れた。これ結構、集中力いるんだよ。

 しかし、そうなると。この全裸びとを相手にするのに避けては通れない質問をすることになる。


「その、シズキさんはマジで女性なの? いや、言い辛かったら深掘りしないけど、非常識なのがお前か俺かだけ教えて」


 冒険者は自由な人種なので、「どんなキミでも最高にクールだよ~」とのたまう無責任な遊び人もいれば、「オカマに生まれるとか罪業カルマカンストしてるから自殺して輪廻ガチャに賭けた方がいいぞ!」と笑って吐き捨てる高僧もいる。俺は前者ほど開化的ではないし、後者ほど敬虔でもない。だから相手の事情によって態度を変えねばならない。

 して、シズキはあっけらかんと笑って(目元しか見えないけど)、両手指を印の形に結んだ。


「この姿は忍術で変化したものでござる。ほら、一人者のおなごが全裸で出歩くには何かと物騒な世の中でござろう?」


 うん、なるほど、100%お前が非常識だね。いや、言ってることは間違ってないけどね? 余計な気を揉んだ俺がバカみたいじゃないですか。


「ちなみにこの頭巾とマフラーは、顔と首の皮を変化の術で伸ばしたのでござるよ。ほら、物騒な世の中、顔バレは怖いでござろう?」


 何そのキショ過ぎる追加情報。物騒なのはお前のファッションセンスだろ。


「一応付け加えておきますと」


 ここで受付嬢がそっと俺に耳打ち。


「彼女の出身である極東の忍者組合ギルドから推薦状を貰っています。そこは女性忍者……いわゆるくのいちを専門に育成する組合なので、女性であることは間違いないかと」


 受付嬢が懐から出した巻紙に目を落とす。

 そこには、達筆な『派遣状・ドスケベくのいちの里』の文字が。


「ドスケベくのいちの里……?」

「はい。最近になって当ギルドと派遣契約を結んだ、女性忍者専門の人材派遣組合です。この街に派遣されて来たのはシズキさんが初めてですね」

「ドスケベくのいちが?」

「はい、ドスケベくのいちが」


 はいじゃねーよ。俺以外の世界が全体的に非常識な可能性出てきたな。というか何か常識改変とかされてません?


「当ギルドの人事係が里まで出向いたので、女性だけの組織であることは確かです。彼、帰ってきてからしばらく“おっぱい”と“むちむち”しか言ってませんでしたから」

「じゃあそこ遊郭だろ。遊郭じゃなかったら化かされてるだろ」


 もういいよ性別は。釣られといてなんだけどもっと大事なことあるし。

 それから話はこいつが監獄にぶち込まれた経緯に移った。シズキは「たはー」ってな感じでまるで悪びれもせず、語ってくれた。


「拙者もひとかどの社会人、大路を往くのに服を着るのはやぶさかでもござらん」

「その程度のことで“やぶさか”とか言える奴初めてだよ」

「服を脱ぐのはダンジョンで探索する時のみ。ダンジョンで全裸探索をするべからず、との法が存在しないことは調べが付いておるゆえ」

「法で裁けぬ悪じゃねーか」

「しかし……拙者の戦闘スタイルは、徒手での攻撃時に稀に敵を即死させる【首切り】スキルに依存してござる」


 そうだ、ステータス鑑定が途中だった。視界いっぱいの全裸男性に何とも言えないやるせなさを抱きつつ、集中してスキル画面を確認する。


 どれどれ、【首切り】:パッシブスキル。素手による攻撃時、20%の確率で敵を即死させる。この効果は敵の耐性によって軽減されない。


 ……強いな。普通にめちゃくちゃ強いぞ。ぶっ壊れだ。

 即死はあらゆる状態異常の中でも最上級の効果とされる。文字通り、どんな魔物であれ必ず絶命させるんだからな。ゆえに強力なボスなんかは即死耐性が高いもんなんだけど、耐性貫通まで付いているのが凄まじい。要は、殴り続ければそう多くない手数でぶっ殺せるのだ。こんなスキル、初めて見た。

 だが、弱点は明白だ。なんとなくいきさつが読めてきて、俺は納得しつつもげんなりしてしまった。


「素手攻撃自体は、威力も衝撃力もゼロに等しい。だから、敵を倒すにはとにかく密着して連打するしかない。そうだろ、シズキさん?」

「左様」


 シズキは瞠目し、重々しく頭を下げた。


「拙者の生存能力は天与の回避技能によるもの。それゆえ、密着して敵を即死させるまで粘り強く連撃を入れ続けると、どうしても被弾を避けられず倒されてしまうのでござる。此度は運よく他の冒険者パーティに遺体を見つけてもらい、街の蘇生屋まで搬送してもらえたはいいものの……」


 全裸で搬送されたため、着替えを含む物資はダンジョンに置き去り。街で蘇生してもらえたはいいが、全裸で外に放り出される羽目になり、と。なるほど、それでわいせつ物陳列罪。


「一つ確認なんだが、誰かに服を貸してもらったりはできなかったの?」


 俺からの至極当然の問いに、シズキはヨヨヨと姿勢を崩して嘆いた。所作はマジで女の子だがな……。


「蘇生屋どのに助力を求めたところ、蘇生料と合わせて非常識な賃貸料を吹っ掛けられてしまい、口論になったのでござる。まったく悪徳商人許すまじ」

「諸悪の根源はお前な? 蘇生屋さんも商売だから」

「それで恥を忍んで、こっそり街を抜けて装備品を取りにダンジョンへ戻るつもりでござった。忍者だけに」

「うるさいよ。忍ぶ前に知れよ恥を」

「しかし裏路地を駆け抜けようとしたところ、運悪く官憲どのに見つかりお縄に就いた次第」

「お前ほど自業自得が似合う男いないよ」

「拙者、おなごでござる」


 ツッコみが追いつかない。一旦格子に掛かったシーツを閉じ、受付嬢と顔を突き合わせる。


「どうです? スタックさんと組めば案外、花開く子だと思って紹介したんですが」

「もう開いてるだろ。おっぴろげにも程があるよ」

「ちょっと……やだスタックさん、女の子に向かってそんな」

「どう見ても全裸男せ……いやもう男だ女じゃなくて、俺が本当に欲しかったのはまともに服着てくれる人だったんだなって」

「それ! それなんですよスタックさん!」


 受付嬢は必死の形相で俺の手を取った。


「当ギルドはドスケベくのいちの里との提携において、領主様のお顔を通じて契約してるんですよ! 初手で招聘した人材がド級の変質者だったのでクーリングオフとかになったらギルドの人事と領主様の権威に泥を塗ることになるんですよ!」


 その人材が監獄にぶち込まれてる時点でもう手遅れだと思われますけど。


「そこで当ギルド最高の付与術師であるスタックさんの出番なんですよ! 服を着ても十全に戦えるよう支援して、なんとかして彼女をまともな冒険者に仕立ててくれませんか!?」


 あ~ね。薄々感じてたけどはっきり言われちゃったな。厄介者押し付けたいってことね。なんか、こう、俺も普通の社会人だから人の役に立てれば嬉しいと思うよ? スキルって自分の人間性がある程度反映されるって言うし。でも限度があるだろ。


「何でもしますから!」

「手段選ばないタイプの身内にそれ言われても……シンプルに引くわ……」

「じゃあお二方のパーティ結成祝い金として、金貨10枚を支給します。結成後、毎月の探索成果に応じて更なる資金援助を行い、スタックさんが一流の冒険者としてすみやかに再起できるよう支援いたします」

「急に現実的だな」


 初手ドン引きさせてこっちの要求ダウングレードさせる戦術かよ。しかし金貨10枚は結構デカい。その後の支援もな。いやでもさ、これからずっと全裸中年男性を引き連れてダンジョン攻略するのを考えたらな……。経歴に傷がつくどころじゃないだろ。


「ちょっと、考えさせてくれ」

「あと15分以内にシズキさんとのパーティ契約が成立しない場合、先述のボーナスは受け取れなくなりますよ?」


 ご丁寧に懐中時計と契約書を両手に出しながらニヤニヤ笑う受付嬢。あんたそれダークパターンだろ。仮にも組合ギルドを名乗る公益組織だろ。


 その時。街の鐘楼から、けたたましいサイレンが鳴らされた。


「大変だぁ!」


 俺たちのもとに駆け込んできたのは官憲。開け放たれた監獄の扉から、何やら外の騒ぎが伝わってくる。

 この警鐘は、街の危機を告げるためのもの。火災や嵐、あとは……ダンジョンで何か異常が起こったときに鳴らされる。聞こえたら、街の冒険者はギルドの召集に応じなければならない。

 官憲は肩で息をしながら、俺に縋り付いてきた。


「ダンジョンに大量のアンデッドが湧いて、探索中の冒険者たちを蹴散らしてる! 領主様のお触れだ、手の空いてる者は今すぐ奴らに対処してくれ!」


 大量のアンデッド。それはもしかせずとも、ジェイドパーティが攻略しようとしている『最後の不死隊』じゃないか。今頃ボスと戦っているだろうとは思っていたが、結局ダメだったのか。周囲の被害はもちろん、あのギミックに対処できなければジェイドたちがやられるのも時間の問題だ。

 助けたい、との思いはある。理不尽な追放をされてしまったが、なんだかんだで極悪人ではないからな。俺の付与スキルの素晴らしさを理解できなかったのは、あいつらの見えているものが俺と違うからだ。

 だが、今の俺はソロの冒険者。誰かとパーティを組まないと、戦えない。スキル説明文の対象である「味方」は、パーティを組んだ相手だけだ。そういう風に、決まっている。

 シズキが鉄格子をガシャンと鳴らした。


「スタック殿」


 その裸体には、闘志がみなぎっていた。上腕が、胸筋が、腹筋が、大腿筋が、その意思に呼応してパンプアップする。

 これが戦装束なのだと、彼は……じゃねえわ彼女は静かに雄叫びを上げて……雄じゃねえよな、すいません。


 つまり。


「シズキさん。細かい説明は省くが、俺の支援は一級だ。あんたの弱点を補って、どんな敵にも勝たせられる。だからってわけじゃないが……」


 いけすかない、あんたにとっては何の義理もない俺の元仲間たちを救うために、今から死地にブチ込まれてくれるか。

 言葉尻を読んだように、シズキの両手のひらがゆるりと合掌を組む。


死人しびとの軍勢など、我が手刀の前には塵芥に同じ」


 俺はそれを聞くと、受付嬢の手から契約書を奪い取って乱雑にサインした。受付嬢のにんまりご満悦な顔色はこの際いい。すぐさま刑務官を呼び出し、シズキを釈放させる。

 街の往来に飛び出す前に、とりあえずの処置で俺のコートを手渡した。それを荒々しく肩に引っ掛け、両腕を組んで駆けだすシズキ。


「待て待てボタン閉めようよシズキさん! それどうやって肩に乗せてんの!?」


 しかもさすが忍者というべきか、無駄に機動力が高い。いくら石畳とはいえ、裸足でぎゅんぎゅん走るじゃん。ダンジョンと反対方向に避難する市民や、要請を受けてダンジョンへ向かっていく冒険者たちに、彼女を視認する暇などない。さながらつむじ風のように、変質者は颯爽と街を駆け抜けていく。


 そうしてあっという間に辿り着いたダンジョンの入口で、シズキは俺を待ち構えていた。

 俺はもう一度、シズキのステータスを確認すべく集中した。

 ひとつ、確かめたいことがあった。


「シズキさんは、服を着ると回避能力が下がるんだよな」

「それがどうかしたでござるか?」


 現在、彼女のACは-76。つまり効果が落ちるほど正の数に近づく。コートを肩に引っ掛けただけでそこまで能力が減衰してしまうなら、まともな服を着せたうえで戦わせるのは難しい。

 だが、現在俺にはわずかな手札があった。コートを返してもらう代わりに、それをシズキに手渡す。


「このお札、なんでござるか?」

「状態異常付与率を5%上昇させるマジックアイテムだ。3枚で15%、俺のスキル【オールインワン】使用時は補正値が倍の30%になる。いいからそれを装備してくれ」


 ――要は、隠せればいいのだ。

 シズキは俺の期待に応えるように、その3枚のお札を身体のある部位へ貼り付けた。


「スタック殿……これは、少しばかり恥ずかしいでござるな……」

「厚顔無恥とはお前のことだなほんと」


 両胸と、股間だ。

 もう、完全にね、下手な全裸より遥かにやべー変態ですよ。頭巾にマフラーに局部にお札張った中年男性ですよ見た目。一応法的には局部を隠せれば公然わいせつ罪には当たらないけど、いよいよもって法で裁けぬ悪じゃねーか。誰か闇落ち勇者ダークヒーロー呼んで来い。逆に都市の外で出会ったら即討伐対象だろこんなもん。

 して、もう一度シズキのステータスに注視する。

 ACは……-99。これは、お札がシズキの身のこなしを棄損する防備として判定されていないということだ。


「これからは、そのお札を付けた状態で戦ってくれ」

「? 委細承知、肌身離さず装着しておくでござる」

「いや終わったら洗って返せよ」


 私費で買ったんだからなそれ。マジックアイテムって装備品の中でもかなり高額なんだからな。

 そして、俺のスキルはあと一個。やることはいつもと同じ、頼れる味方にオールインだ。


「スキル【オールインワン】、発動」


 俺は今自分が持っている最後の手札を切った。

 ジェイドたちに「長い」と切って捨てられたスキル説明文の内、4分の3ほどはまったく無意味だ。こいつは攻撃スキルも防御スキルも魔法スキルも持っていない。強力な武器や防具も持っていないから、せっかくの装備補正プラス100%も俺の貸したお札にしか掛かっていない。そして素のステータスも徒手空拳相応のものだから、基礎ステータス上昇効果もみそっかす。【神授の英雄】スタックが消費されないから、消費数に応じた攻防のダメージボーナスも意味を為さない。

 ただ一つ、有用な効果がある。


「シズキさん、今のあんたはすべての攻撃が一撃必殺だ」


 シズキの素の【首切り】スキルによる即死付与率20%。俺の貸したお札によってプラス15%。俺の【オールインワン】によって装備補正プラス15%。そして、同スキルの効果によって、無条件で状態異常付与率+50%。

 計、100%。俺は100%という言葉が好きだ。95%みたいな確率が一番信用ならないからな。


「殴った後の敵は気にしなくていい。必ず即死している。何も気にせず、無双しろ」

「よく分からぬが……心得た!」


 シズキは深々と俺に一礼し、ダンジョンへと飛び込んでいった。俺の付与スキルの仕様なんぞ何ひとつ、ほんとに何一つ理解していないというのに。俺の言葉を何ひとつ疑わず、俺の託した力を信じて。

 第一階層から、そこは既に亡者はびこる冥界だった。錆び付いた太古の防具に身を包む、禍々しいアンデッドの軍勢が回廊にひしめく。シズキはその戦列に、まっすぐに突っ込んで行く。

 手刀が閃く。アンデッドの首が飛ぶ。

 手刀が閃く。アンデッドの陣形が打ち崩される。

 手刀が閃く。ただ徒手空拳の一刀のもとに、悪辣な不死の軍勢が薙ぎ払われていく。

 つむじ風、なんて生易しい表現をしてしまったことを詫びよう。そして改めよう。


 暴風。竜巻。嵐。軽いだけの、ただの掌をそう評するのは奇妙なことだ。まったく愚直なほどに単純なその攻めが、複雑怪奇なロジックで動く不死隊の命脈を吹き消していく。圧倒的な強さの前に、どんな小細工も意味をなさない。不死だからどうした。残機がなんだ。

 すべて倒せば、それで済むのだ。


「シズキさん、後ろだ!」

「承知!」


 スキルを放ってしまった後の俺にできることと言ったら、敵の接近を知らせるくらいなもの。けれど、それすらシズキには余計な世話だったかもしれない。

 AC-99。「99」という数字は100%と同じくらい信用が置ける数値だ。それはなにがしかの技能がカンストしている証だからだ。たった4しか違わない「95」だと不安なのに、不思議だね。

 シズキは避けるわ避ける。敵があえて外しているようにしか見えないくらい、その攻撃は当たらない。時に鮮やかに、時に大胆に、敵の剣を、槍を、紙一重で凌ぎ続ける。さながら演武だ。

 猛々しい背中ををひたすら追っていくうちに、第一階層突破。第二階層に入って敵軍団の密度が上がったけど、全裸忍者の驀進は止まらない。首切り、回避、首切り、回避、首切り、回避。その連続。

 瞬く間に、第二階層突破。ついに第三階層、ここが前人未到の階層ボスである『最後の不死隊』の本拠地だ。

 階段を下りた途端に隊伍を組んだアンデッドたちが槍衾を作っていたけれど、シズキの前にはささやかな生垣も同然。壁と天井を跳躍し、陣形の中央に着地。鍛え上げた上腕二頭筋が唸りを上げ、命無き軍勢を刈り取っていく。一度たりとも、その無駄に美肌な肉体に傷をつけることは叶わない。


「この先がボス部屋だ!」


 マップは頭に入っている。俺の先導で最短ルートを駆け抜ける。アンデッドたちが蔓延る薄闇の迷宮を、全速力で突っ走る。

 時おり不死隊の手先とエンカウントする度、肌色の変態が視界を縦横無尽に飛び回り、露払いをしてくれる。意味わかんないくらい強いな。これでも一流パーティに所属してたのに、あいつらと組んで探索するよりずっと早いぞ。


 そうだ。

 


 俺は、わけの分からない変態忍者に全幅の信頼を置き、死地を歩いている。

 ACってなんだ? ここまで完璧な回避機動、どんな防御スキルですら実現できないのに。それに、【首切り】の仕様もあまりにシンプルに強すぎる。ちょっと手を加えれば殺戮モンスターが完成するほどの絶大な力だ。

 ああ。ジェイドたちが俺に向けた感情、これだったのかな。


 理解不能。だから怖い。

 自分たちがどんなシステムで、どんな原理で戦っているのか分からないのは、そりゃ怖いよな。皮肉にも、俺は俺を超える外れ値を前にしてようやく元仲間たちの気持ちが分かったのだ。


「――スタック殿」


 唐突に、シズキが振り返った。鋼のような胸板に貼られた2枚のお札がひらりと、厳かにはためく。


「拙者、人に畏れられるのは慣れているでござる」


 頭巾に空いた目出しから覗くのは、哀しげに揺れる瞳。俺の視線に気づいていたのだ。


「極限の軽装にて軽業を発揮し、絶死の魔手にて命を刈る。ドスケベくのいちの里は、斯様な異端のシノビの寄り合いにござる。この街の冒険者ギルドと盟約を結ぶまで、里の外には拙者らを白眼視する輩しか居らなんだ」


 じきに、ボス部屋に到着する。不死隊の不気味なときの声が、入り組んだ通路に反響する。

 いよいよ間近に控えた最後の死地にあって、シズキはとても穏やかだった。


「ムチムチ長老が拙者をこの街に派遣するとお達しを出した時、驚いたものでござるよ」

「ごめんムチムチ長老って何?」


 ちょっとしんみりしそうだったのに特大のノイズブチ込みやがって。


「何って……里で最も忍術に長け、最もムチムチの肉体を持つ筆頭くのいちのお婆様でござるが?」

「ごめん聞かなかったことにするから続けて」


 俺が悪かった。俺が悪かった。勘弁してください。いや、趣味がどうこうじゃなく、狂ってるのが俺か世界かみたいな話になっちゃうからさ。


「しかし拙者、自分が外とのつながりを持てる喜びに沸き立ったことにも驚いたのでござる」


 シームレスにしんみりモードに戻ってくれてありがとうございます。


「一人での冒険は心許ない。しかし、だからこそパーティを組んで共に歩む。拙者が一人でダンジョンに飛び込んで失敗したのも当然の帰結でござろう」


 シズキは軽い足取りでボス部屋の重厚な扉の前に立った。内部から、まだジェイドパーティが戦っている音が聞こえる。俺という戦力が欠け、劣勢を強いられてもなお、彼らは持ちこたえていたのだ。

 1人より2人は2倍強い。2人より3人の方がさらに強い。いかんせんダンジョンという閉鎖構造では6人辺りで戦力的に頭打ちになってしまうが、助け合った方が得をする。どんなに自由な奴らでも、結局は徒党を組まなきゃやってられない。

 アライメントが善と悪だろうと、秩序と混沌だろうと。戒律が違おうと。男と女だろうと。ヤリモクだろうと愛妻家だろうと。基礎学力がかけ離れていようと。キャリア意識が雲泥の差だろうと。

 そして、まるで違う世界観に生きていようと。


「スタック殿のスキルがどう働いておるのか、拙者の浅薄な考えでは及びもつかぬ。けれど、それでも2人の力でここまで来れたのは事実にござる。分かり合えずとも、助け合う。それでどうやら世界は回っているのでござろう」

「……」


 だから。

 追放された時、なぜ俺が悔しかったかといえば。規格外のチートを使いこなせる俺が、なぜ哀しかったかといえば。

 つまりはそういうことなのだろう。


「……行こうぜ、シズキさん」

「御意」


 扉を開く。

 ボス部屋にひしめくアンデッドの群れ。その中に、ジェイドの攻撃スキル【聖剣】の、今にも消えそうな煌めきがあった。

 シズキが動く。はしる。敵を散らし、掻き分け、剣の嵐を潜り矢の雨を越え盾の壁を蹴り――満身創痍のジェイドパーティを嘲笑う、不死隊隊長の頸にその必殺の手刀を滑り込ませた。


「イ、ヤアアアアアアア!」


 初めてシズキは気合の声を上げた。

 手近な部下を犠牲に残機を1スタック消費し、隊長は復活。しかしその傲慢な兜を、飛ばしてみせた。闖入者の奇襲に警戒してか、用心深く隊伍を組み直す。

 シズキの筋骨隆々のたくましい背中が、ジェイドパーティを守るように立ち塞がる。

 ジェイドが、ドニーが、ロザリーが、リンデが、一斉にシズキに注目し、それから遅れて来た俺に顔を向けた。

 唐突な救世主の訪れに、皆さん声を揃えて一言。


「「「「誰だこの変態!?」」」」


 ですよね。


「あー……細かい説明は省くけど、俺と新しくパーティを組んだ忍者のシズキさんだ」


 ジェイドパーティ全員の頭上に疑問符が浮かぶ。ですよね。改めて何が忍者なんだよこいつ。忍んでるのは恥だけじゃねーか。

 まぁそんなことはいい。彼我の状況を再確認しよう。ジェイドは立っているのがやっと。盾役として仲間を庇い続けたドニーは戦闘不能、ロザリーは魔力切れで戦力外、リンデは味方の治療で手一杯。

 一方『最後の不死隊』はというと。


「ジェイド、〔不死隊歩兵〕を何体倒したか覚えてるか?」

「はぁ!? そんなの数えてるわけねえだろ!」

「だよな」


 頭の作りが違うもんな。だが俺は数えてる。シズキが倒したのは184体。そして今までジェイドパーティに居た俺の戦力分析によると、彼らはおそらくここまでの戦闘時間で60~70体ほどの〔不死隊歩兵〕を倒せているはず。

 そろそろだ。先ほど〔不死隊隊長〕が陣形を組み直したのは、単にシズキだけを警戒してのことではない。


「【死兵の伏撃】は、250スタックまで重複する」

「は?」


 俺には、見えている。敵がどんなロジックで動いているか。


「つまり――新たに湧いた〔不死隊歩兵〕を250体倒したら、奴の最終形態だ」


 不意に、アンデッドたちの身体が小刻みに揺れ始めた。カラカラ、カラカラと嘲笑するかのような音がフロアに響き渡る。

 無数の不死隊を構成する骨が、一気に崩れ、一つのうねりとなって〔不死隊隊長〕のもとに収束する。やがてそれは、巨大な一体の骸骨を構成した。頭蓋が高い天井に擦れ、巨大な両手が地面を叩き鳴らず。


「アクティブスキル【群体の遺志】。全ての〔不死隊歩兵〕の残機を〔不死隊隊長〕に統合し、力任せの戦いに持ち込む。さんざん数で押してきた後にこれとは、なかなか手ごわいよな」


 あの巨体に対しては盾役による防御スキルが機能しづらく、集団戦が基本のパーティに大きな被害をもたらしてしまう。だから俺は当初、形態移行される前に付与スキルを積んだジェイドの攻撃で一気に敵残機を消し飛ばしてしまう方針を取ろうとしていたのだ。

 だが、今は状況が違う。


「シズキさん、頼む」

「任されよ」


 細かいロジックなんてもはやどうでもいい。今、【最後の不死隊】の残機は1。それだけが重要なんだ。

 雄々しい裸体が跳躍する。巨大な足によるストンピングを華麗に躱し、亡者の脛を駆け登る。悪しき亡者を足蹴にして、逆巻く突風のように忍者が飛翔する。

 平に構えられた手刀が、髑髏の頸元で静かに薙ぎ払われた。

 『最後の不死隊』は、その名を冥府の神に返上するかのように、あっさりと絶命した。


「な……何が、起こってるんだ……」


 崩落する骨の滝の中、悠然と駆け下りてくる全裸忍者。それをただ見つめるジェイドの口から漏れたのは、当然の困惑だった。

 轟音と共に崩落するアンデッドの山の頂に、シズキは降り立った。塵に霞んだ風にたなびく、マフラーと3枚のお札。頭巾の目出しからわずかに覗くその面持ちは、誇り高く輝いている。

 俺は、ジェイドの肩に軽く手を置いた。


「俺にも、何が何だかサッパリだ」


 ジェイドと俺は、揃って乾いた笑みを浮かべた。


 ◇◇◇


 『最後の不死隊』討伐から一夜明け。

 奇跡的に冒険者たちの死者はゼロ。手傷を負ったジェイドパーティも、蘇生屋ではなく治療屋のお世話になることに。一件落着ってわけだ。

 今回のボス撃破は、ジェイドパーティと俺&シズキ、両パーティの功績ということになった。領主様は手ずから招聘したシズキの活躍をいたく誉めそやしていたが、すべてをシズキの手柄にすることだけは彼女自身が固辞した。


「拙者が思うに、敵を倒したことよりも、仲間と助け合えたことこそが輝かしい成果にござる」


 冒険者酒場でブドウ酒のジョッキを片手に、したり顔の忍者シズキ。

 ……いや、それはいいんだが。


「なんでお前、全裸中年男性のままなの? マジでやめな?」


 シズキは相変わらず雄々しい姿に変化したまま、ふんどし一丁で椅子に座っていた。ウェイターさん嫌がってるから止めろよ。ふんどし一丁で社会性を補えるほど娑婆は甘くねえよ。


「いや……ほら、物騒な世の中でござろう? 里を出てからずっと変化してたから、戻り方を忘れちゃったのでござる」

「じゃあもうドスケベくのいちの肩書き返上しろよ。ドスケベ全裸中年男性だろ」


 バツの悪さをごまかすように、シズキは頭巾のままブドウ酒を口にした。実際には顔の皮を引き延ばしてるから頭巾のまま呑めるんだな。いやキショ。


「まぁまぁスタック君、細かいことはいいじゃないかぁ」


 俺をなだめたのは、隣で料理を取り分けるドニー。


「局部を隠しているのですから、法的な問題はありませんよ。狂戦士やアマゾネスなどの軽装職の方々も、同じくらい露出度の高い衣装を着ていますし」


 理路整然と援護射撃を加えたのは、攻撃魔法スキルの赤本を読み込んでいたリンデ。


「シズキちゃんのやりたいようにやらせたら良いじゃないの、女子は気分屋なんだから。スタックったら器小さいわよ」


 気だるげにフォークをくるくるしつつ全裸忍者の肩を持つロザリー。


「……お前に倣ったわけじゃないがよ、スタック」


 円卓の皆を見渡して、ジェイドが口を開いた。


「とりあえず、俺たちは助けられたんだ。お前の意味不明な付与スキルと、この……なんだ……? 忍者? の方にな」


 元パーティ全員が、頷いた。


「分かったんだ。、ってのがどんだけ俺たちを助けてくれていたか。どんだけ俺たちの力になってくれていたか。だから……虫の良過ぎる申し出だと分かってんだけどよ……」


 ジェイドは卓に頭をぶつけんばかりの勢いで、俺に頭を下げた。


「スタック、もう一度俺たちと組んでくれないか! 良ければそちらのシズキさんも、好待遇で迎える所存だ!」


 俺は、答えに詰まった。

 1人より2人は2倍強い。6人いれば6倍以上だ。理解し合えなくたって助け合える仲間が多いに越したことはない。

 でも、今の俺には、一度追放された理由を理解できる。その問題は、俺に解決できるものではない。


「追放前に私たちが具申した、パーティ編成上のスタックさんとの摩擦についてですが」


 俺が黙っていると、リンデがぱたんと教科書を閉じ、わざわざ挙手をした。


「こうしましょう。スタックさんの付与スキルを、“ダンジョン攻略を楽にするため”ではなく“ピンチを切り抜けるため”に使うのです」

「……へ?」


 それは、虚を突かれるような提案だった。

 つまり、俺を安全装置のように使うと。確かに俺のスキル構成は探索の快適性に全振りしてて、「極力少ないアクションで」を信条に組まれたものだったけども。だってその方がチートっぽくてカッコいいと思ってたし。


「僕ら、スタック君がいなくてもちゃんと戦えるようにならなきゃいけないんだ。でもそれは、スタック君がいないほうが良いってわけじゃないんだよ。探索に参加してくれるだけでも安心っていうか……うーん、都合よすぎかなぁ」


 ドニーもそう付け加えながら、気まずそうにぽりぽり頬を掻く。


「ま、普段の探索が特訓みたいなものだと思えばいいのかも。あたしだって、自力で短縮詠唱とか練習するに越したことはないし? いざとなったらあんたに頼るのも、まぁたまにはね?」


 ロザリー……だけなんか傲慢だけど。でも、俺が追放後に少し考えていた、新人を一から訓練していく方針にも似通っている。俺は、個々のメンバーの安全装置になることができる。いざというときに支援する、それだけでもいる意味はあるだろう。

 みんな、俺を理解できないなりに、俺に向き合おうとしてくれてるんだな。

 そっと、机の陰でシズキがサムズアップした。

 答えは決まっていたんだ。あの時悔しかったのも、哀しかったのも、俺の欲しかったものが決まっていたからなんだ。


「いいよ、ジェイド」


 今さら握手を求めるのは気恥ずかしくて、俺はジョッキを掲げた。


「俺はガサツな奴だから、細かいことは気にしない。それよか乾杯しようぜ」


 静かに面を上げたジェイドは、きつく唇を噛みしめながら自分のジョッキを握った。


「俺たちのパーティの、新たな門出に」


 ジェイド率いる一流冒険者パーティに、俺というチートな外れ者が戻ってきた。そして、俺なんぞ目じゃないくらいのはみ出し者がもう1人加わった。はみ出しっていうかモロ出しだけど。だから、もはや細かいことを問題にしている場合じゃない。あとは俺たちの使い方次第だ。

 てんでバラバラな奴らでも、助け合える、そんな仲間がいるんだから、これ以上の贅沢はないだろう。




 あ、ちなみに契約上俺とシズキの2人パーティは一旦解散することになり、受付嬢のうそぶいていた補助金とかはまったく受け取れなかった。ばかりか、相変わらずシズキがまともに服を着てくれないので、そこそこ懐に痛い違約金も払わされる羽目になった。

 ……あれこれ俺なんも得してなくない? 前科1犯の変態押し付けられただけじゃない? まず俺悪くなくない? なんで俺が罰金課されてんの?


「やだなぁスタックさん、契約書にちゃんと書いてありましたよ?」


 受付嬢に、契約書の文面を見せてもらったところ。めちゃくちゃ小さい字でこう書いてあった。なお随所に挟まれてる※印は別冊の冒険者ギルド法および付随法の鈍器みたいな冊子に注釈が記されているそうです。




 (前略)当ギルドは契約冒険者(※1)に次のいずれかの事由(※2)が生じた場合、当該契約冒険者の利用に係る本パーティについて全部若しくは一部の冒険者評定ボーナス(※3)提供を停止又は利用制限することがあります。


(1)本利用規約に定める契約冒険者の義務(※4)に違反したとき

(2)本冒険者評定ボーナス履行対象者への当該契約冒険者の義務について、法定評定期限(※5)を経過してもその義務が履行されないとき(当ギルドが定める方法による義務履行のないとき、及び法定評定期日経過後に義務が履行され、当ギルドがその義務履行の事実を確認できない(※6)ときを含む)

(3)違法に、又は明らかに公序良俗に反する態様において本冒険者評定ボーナスを不正利用したとき、またはその意図が認められる(※7)に至ったとき

(4)当ギルドが提供する冒険者評定ボーナスを直接又は間接に利用する者の当該利用に対し重大な支障を与える態様において本冒険者評定ボーナスを利用したとき

(5)当ギルドが提供する冒険者評定ボーナスの信用を毀損する(※8)おそれがある態様において 本冒険者評定ボーナスを利用したとき

(6)冒険者ギルド組合員法第23条5項(※9)に定める申込の拒絶事由に該当するとき

(7)不適切と判断する態様において本冒険者評定ボーナスが利用されたことを理由に、各種国内貴族院制度(※10)にかかるところの領主家(※11)が当ギルドへのギルド法第12条に基づく役務管理の委任を停止したとき

(8)強制執行、担保権の実行としてのギルド競売(※12)、財産没収(※13)、地租税(※14)およびダンジョン入場税(※15)の滞納処分を受け、破産産手続の申立て、その他領主付き大審問官の評価するところによる著しい信用悪化があったとき

(9)本冒険者評定ボーナスを利用して、犯罪行為又は犯罪に結びつく行為をしたとき

(10)前各号に掲げる他、当ギルドが不適切と判断する態様において本冒険者評定ボーナスを利用したとき

(11)その他弊ギルドが不適切な利用の可能性があると判断したとき(※16)




 ……いや長えよ! 分かんねえよ! 何がどう作用してして俺がギルドに金払わされるんだよ!


「ね? 良く知らずに頼るって、怖いでしょ?」


 そう言って、受付嬢は悪魔のような微笑みを浮かべるのだった。お終い。

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えっ? 最強付与術師の俺を追放ですか!?~万能スキル【オールインワン】(スキル発動時、(前略)(中略)(後略)する。)の効果が難解すぎて誰も理解できないんだが~ 西園寺兼続 @saionji_kanetsugu

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