潰れた雪ダルマ
@kaganoseka1
第1話 雪ダルマ
フカフカと積もった雪をかき分けてかき分けて、やっと公園の真ん中に辿り着く。
「やった、一番乗り」
私は深く積もった雪の中に思いっきりダイブした。
「待ってよ、にいちゃん」
私の踏んだ箇所を辿りながら、弟はまだ小さい足をうんしょうんしょと上げて歩いてくる。
その愛らしい姿に私は思わず笑ってしまった。
何をして遊ぶかと聞いたら、雪ダルマを作りたいとはしゃいで言うので特別デカいのを作ってやることにした。
手のひらサイズの雪玉を作り、それをサラサラの雪の上を優しく転がしていく。
ある程度大きくなったら、弟と一緒に転がしていく。
枝を刺して手を作り、そこら辺で拾った石を目と口にする。
少し不恰好だが、まぁ子供が作ったならこれくらいだろう。
弟は完成した雪ダルマをかなり気に入って、それから毎日公園へ行って、雪ダルマの様子を見にいくのだ。
まるで自分に下の子ができたかの様に弟は
雪ダルマをたいそう可愛がった。
しかし、所詮は雪だ。
ただでさえ不恰好な雪ダルマは、溶けて段々と形が崩れていった。
弟はなんとか食い止めようと周りの雪をくっつけて補強しようとしたが、それも焼石に水だった。
仕舞いには、手のひらサイズになったのを見て、弟はわんわん泣いて泣いて手がつけられなかった。
「来年、また来年作ろうな」
弟を宥める為に出た精一杯の言葉だった。
また冬が来るのはあっという間だろう。
「いってきます」
母がいるであろうリビングに向かって言うが、返事は帰ってこない。
私もあまり返事に期待していないので、そのまま家を後にした。
吐く息は白く、あたりはうっすらとだが、雪が積もっている。
その上を歩くとサクサク音がなって面白い。
ふと、小さな公園に目が止まった。
公園には、ベンチの隣に泥が混じった雪ダルマが鎮座していた。
少し懐かしさに惹かれたが、近付けば戻れない気がして、私は足を早めて会社に向かった。
潰れた雪ダルマ @kaganoseka1
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