<コメント>

 今回のお題は「秘密・塩・花束」でした。「塩」「花束」を僕が出しました。「花束」は「アルジャーノンに花束を」を最近読んだので選びました。「塩」は特に理由なしです。

 「秘密」は物語につきものです。どのジャンルでも問題なく使えるでしょう。「塩」は人間にとって重要なアイテムの一つです。「サラダ」や「サラリーマン」のような語の語源になったり、「青菜に塩」や「敵に塩を送る」のような慣用句になったり、文化に根付いた物質です。「花束」はお祝いのイメージ強いです。物語に取り込む上では、その花言葉も重要な要素になります。

 今回は、始めに「05_秘密の塩漬け」を思いついたのですが、あまり納得がいかず、他のアイディアはないかと考えても、納得がいかず、最終的に「全部書いてまとめちゃえばいいんじゃね?」という結論に至りました。

 以下、軽くそれぞれの話をします。


①秘密の塩漬け

 構想は二番目ですが、執筆自体は最初に行った作品です。「失恋を心の奥底に眠らせる」ということを「秘密の塩漬け」としました。最後の「ミモザの花束が波間に沈む」もその暗示です。もう一つの「秘密の塩漬け」と対比させるために、できるだけ綺麗な表現にしました。辻褄が合うように、回想部分も調整しています。


②密会

 最後に書いた作品です。聖書に「塩の柱」が出てくることは知っていたので、そこを調べて書きました。正直、短編を5編にするために絞り出したものではあります。後半の解説を読んで前半部分が完成する形にしました。


③君の知らない僕の顔

 この作品は叙述トリック風に、盲目であることを伏せて書いています。その点で、茜視点の語りでは視覚情報を入れず、聴覚、触覚を中心に書きました。これには、参考にした小説があるのですが、ネタバレになるので作品名は言えません。結果としては違いますが、一応、「花束」をメインに考えた話です。


④この恋は隠し通さないといけない

 短編集にすることを決意させた作品です。「塩対応」「花束」から地下アイドルの話にしました。これを書くにあたり「押しが武道館いってくれたら死ぬ」を読みました。あーや推しです。会話文のみで構成し、盗聴部分は二重鍵括弧で表現しました。これも叙述トリック風です。


⑤秘密の塩漬け

 最初に考えた話です。「死体を塩漬けにする」というイメージに「花束」をぶつけました。全体的にじめじめとしたイメージで書いています。最後の「君は私だけのもの」というセリフは黒い薔薇の花言葉です。


 短編集全体としては、「恋愛」を統一テーマとし、爽やかな愛から歪な愛へのグラデーションで並べています。

 一本の矢では折れようとも、三本の矢では何とやらで、そこそこよくなったと思います。

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第76回 秘密の塩漬け [全5編] 佐々木キャロット @carrot_sasaki

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