第21話 大黒天とゴリラの間
「後藤先生の席はあそこよ」と教頭が指差した。
大黒天とゴリラの間、いや、校長と
低いテーブルの上に乗った七輪を四人で囲んでいる。
参加者は全員で15人くらいだろうか。
「後藤先生、こんな辺鄙な町によく来てくれた。俺は、嬉しい。なまら嬉しい」
三郎の父親でもある井出は、既に酔っている口調だ。
「いい町だからさぁ。若いやつらも数は少ないけれどちゃーんといるから、今度は青年会で歓迎会をやろう。後藤先生の」
「おい、まさかお前も若いやつらのメンバーに入っているんじゃないだろうな。青年会の歓迎会は妻帯者禁止だよな?」
井出の正面に座っている、顔の細い男がビールを飲んだ。
「健太郎、はんかくさいこと言うなや。先生、こいつは
「そう言われれば、達也さんと似ています。顔や体がしゅっと細いところが」
「健太郎はよぉ、脱いだらぶよぶよだけどなぁ。先生、達也も三郎もなんか悪いことしたらぶったたいていいから。なまら厳しくしてやって」
井出がビール瓶をこちらに傾けた。
私は急いで半分くらい残っていたビールを飲み干した。
「いやいや、先生。そんな体育会系みたいなことしなくていいから。でも嬉しいなぁ。飲める女の先生、久しぶりでないかい?」
井出は私のグラスになみなみとビールを注ぐ。
「ちょっと井出さん。後藤さんにちょっかい出さないでよ。まったく存在自体がセクハラなんだから」
校長の向こう隣に座っていたみどりが言い、
「みどりちゃんには敵わんなぁ」
井出は大口を開けて笑った。
「みどり、ちゃん?」
「安藤さんところのみどりちゃんは、あいつがおしめつけてた頃から知ってるさぁ。いっぱしの女に育っちゃって」
それはそうと、校長の横に配置されているのが年齢の若いみどりと私というのはおかしい。
しかも職員より保護者の方が多い。
横浜では学校外で保護者やこどもと距離を置くのが当然だった。
住所、電話番号、SNSアドレスは絶対に教えない。
モンスターペアレントと呼ばれるような保護者が四六時中、担任のスマホに連絡したり、家の前で待っていたりして問題になったからだ。
白い世界で想いを伝えたい yuzu @yusotok
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