第2話 スタートリッパーのキング

「ねえリリ。私のジョブ建築家って書いてあるけど家とか建てれるの?」

『もちろんです!建築家のジョブはごくまれで、重宝されているんです!っと。話してる間に建設ギルドにつきましたよ!』

美晴の前にはおしゃれすぎるガラス張りの建物があった。だが周りと風格が圧倒的に違い、ものすごく目立っている。


「う、うぅ…ガラス張り…東京を思い出す…。こんな技術まだ発展してないと思ったんだけどな…。」

『マスター。後方から殺気?があふれてきてます。ご注意を。』

え、そうなの。ありがと。


美晴が後ろを向くと真後ろにでっけぇ腹が見えた。

「ゔっ。な、なにこれ…。」

「ん?」

その途端、その腹が動いた。

「くハハハハハ!その度胸、面白い!ギルド登録だな?新入り!」


「し、新入り…?」

話が急転換過ぎて頭に全く入ってこない。そこで頭の中にリリの声が響いた。

『マスター。この者は建設ギルドの創立者、レンタ・ミカミです。』

創立者…?ってことはギルドマスターってやつ?!ってか名前日本語…?お、おぅ…。


「無断ですまんが鑑定させてもらった。ちょっと裏に来い。」

「え?!ちょ、ちょっと…!」

やばい…ステータス見られた…!

と言って美晴はギルマスに引きずられギルドに連行された。


中に入ると貴族のような格好の人たちの目が私へいっせいに向けられた。

「ギルマス直通のやつだ…!俺、初めて見るぞ!伝説級を生み出すってな!」

「ああ!これは期待できるぞ!」

「俺あの可愛い子に弟子入りするぞ!」

「俺も!」


急に美晴の周りに人だかりができてびっくりしてしまった美晴は言った。

「え、えっと…みなさん、弟子入りというのはいいんですけど出世は見込めないですよ…?それに…う、うわぁ〜!」

異世界から来た、と言おうとするとギルマスは私をもっと引っ張った。裏へそのまま引きずられると待合室のようなところに行かされた。


ギルマスは周りに誰もいないか確認し、美晴に言った。

「俺と同じく転生した異世界人がいるとはな!ガハハハ。それにその魔力量!

破滅だな!ハハハハ!」

「え?って!同じくってことはあなたも日本から…?」


レンタは何かを紙に書き、私に渡した。

「それを読み上げてみろ。日本語版の魔法陣発動方法と術式が書いてある。建築用技術はそれで使えるぞ。ふつうの魔法はできるみたいだから習得すれば簡単にできるぞ。」

ん…魔法陣発動術式…?とりあえず言ってみよう。

美晴は目を瞑り書かれている通りに手を出し呪文を唱えた。


《大地の神よ、祝福の明かりよ、我らに力を与えよ。造形アルキルプトル!》


すると、部屋中にまぶしい光が広がった。そしてすこしすると手に冷たくかたい物質があるのが伝わった。目を開けると手には見たこともない暗黒物質ダークマターが出来ていた。三つの穴があり、それがムックの叫びのようで美晴は叫びそうになった。


「ハハハ、魔法を発動するにはいかに魔力の質が良くともイメージも大切だぞ。今何も想像しなかっただろう?それは魔力の質がいいから暗黒物質ダークマターまでで済んだんだ。ほかのやつらは動く暗黒物質ダークマターだぞ。」

う、動く暗黒物質ダークマター…想像しただけで吐きそう…。

「そんなとこで。ギルド登録だろ?魔力量とか分かってるからそのまま映し書くか。」


『マスター、魔力量そのまま記載されてしまいますよ?いいのですか?』

あ、そうだった。

「す、すいません!魔力量だけは変えてくれませんか?ばれるとめんどくさいので。」

「そうか。まあ同郷の仲だ。いいぞ。っと。言ってる間にできたぞ。」


―――――

時透 美晴 D rank

レベル 1

スキル 言語習得・鑑定・直通テレポート・建築・器用

加護  不明

―――――


おお…。すごい。Ⅾランクか…。まあ変にあげる意味もないしね。

「ありがとうございます!では、また!」

と言って帰ろうとした美晴をレンタは呼び止めた。


「あ、あとすまんが月一に石材とかの調達依頼が入ってくるからその依頼必ず受けてくれ。ルールだ。」

「ん?ああまあ分かりました!ではさようなら!」


外に出ると冒険者ギルドの自称ギルドマスターが私にスカウト紙を渡してきたが全て無視した。

「……。前世みたいだなぁ…この方に清き一票をとか、取材!とか言ってくる人もいたし…まあいいや!今は丘で焼肉店を営むために建物作んなきゃ!」

と言って美晴は丘を目指した。


『マスター、そろそろ丘に着きますよ。』

あ、ほんと。よいしょっと。はあ…ここの風、気持ちいなぁ〜!


美晴は丘のてっぺんで両手を大きく開き風を受けた。日に当たって東京にいた時とは大違いだった。すると、真上に影ができた。なんだ?と上を見上げると銃を持った人が。


「初めまして。いや、覚えてるかネェ?いやあ神はこの方をずいぶんと派手にしましたネェ。ウククク。」

「スタートリッパーのキング…!ここに何しに来たんです?!」

少し反抗的に声を荒らげると、誤解だ、誤解だといいながら降りてきた。


「大丈夫だ。前は依頼主が名を下したから処分しただけですネェ。まあ早く要件を言いますネェ。焼肉。知ってますネェ?これから営むのでショウ?私も営みたいのデス。」

…聞いたことがある。依頼されたらすべてを完璧にこなす、絶対主義。裏社会では最強殺し屋(スパイ)の疾風の殺戮、キング・ド・ロジャー…!住まいも出身も全てが不明な最強男…!


「え、ってかなんでそんな人が営みたいの…?」


つい、言葉にしてしまった。だがそれを普通に受け取ってキングは即答してくれた。

「普通に焼肉が好きなんでネェ。おねぇちゃんが殺される前は焼肉くいーんにめっちゃ行ってたのデス。」

同胞…!


「で、焼肉屋を私も営みたいのですが良いですかネェ?」

ま、まだ信用に足りない…でも人員は確保したい…。なやんでいると、リリがいい案を出してくれた。


『マスター!それならロジャーさんを働かせるけれど、給料を支払わないというのはどうでしょうか?衣食住の保証付きで。』

あ〜。まあそれでもいいね。よ〜し。


「まだ信用できないからキング…さん?をお試し期間で一ヶ月住み込みで雇います…でも、お給料はないです…いいですか?」

それを聞いたキングは嬉しそうに言った。


「本当?!ありがとうや!ワイ嬉しいわい!それと、キングでええで!堅っ苦しいの苦手やけん。使いっ走りにしてくれ!」

……。口癖、変わったな?ねぇリリ。

『はい。99.9%変わりました。』


だよね。まあそんなこともあるのかな。

「まあとりあえず、よろしくねキング。詳しくとかは家を作ってから話してね。」

「ああ!それと…ワイ空中歩けるけん容易く街入れたんよ。だからギルド登録せっておらんくて…すまん…」

ああそんなこと?


「別にいいよ。お肉は新鮮なうちに日本の精肉店で買ってくるから。」

「へ?」

キングの拍子抜けした声が丘に響いた。

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直通テレポートで異世界焼肉屋、始めました! 〜特にドラゴンの肉が美味しいんだけど!〜 飯麦 食飲 @123456790

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