小説投稿サイトでの「馴れ合い」の弊害
雨宮 徹
小説投稿サイトでの「馴れ合い」の弊害
結論から書く。小説投稿サイトを利用するのであれば、コミュニティーへの参加は推奨できない。あくまでも「基本的には」であり、うまく使うのが前提条件だ。
なぜ、コミュニティーへの参加が良くないのか。いくつか理由を書く。
・コミュニティーに参加していると「馴れ合い」になる
・「馴れ合い」のもとでは、正確な評価がもらえない
・「馴れ合い」を使えば、あたかも名作を書いたような錯覚を起こす
■コミュニティーへの参加は「馴れ合い」への第一歩
小説家というものは書き上げた小説がどう評価されるか気になり、場合によっては世に出さずに自分の胸の中にしまう人もいるかもしれない。駄作だと言われるのを恐れてだ。しかし、それはもったいない。せっかく書いたのなら、小説投稿サイトへ投稿してみるのがいい。
批評が苦手な人はコメント機能をオフにすれば傷つかないし、少なくとも誰かの目には触れる。名作が世に出ないのはもったいない。
そうは言っても、誰かに評価してもらい改善したい場合もある。その時は、家族や知人、友人に頼る方が多いだろう。それ以外の方法として候補に挙がるのが「小説投稿サイトのコミュニティーへの参加」だ。
コミュニティーへの参加とは、お互いに接点がない人同士の交流だ。少なくとも、プライベートで付き合いがある人ではないだろう。顔はもちろん、それぞれのバックボーンも分からない。そんな中で交流をするのだから、相手を傷つけないように細心の注意を払う。
すると、当たり障りのないコメント・意見しか言えなくなる。つまり、コミュニティーに参加しても有益とは限らないのだ。作品を褒めることはあっても、改善点を指摘することはない。これは「馴れ合い」である。サイトによっては辛口評価前提で読みます、という方がいるので、そういった人を頼るのが一番良い。
■「馴れ合い」は評価をゆがめる
コミュニティーにどっぷりつかる前に抜けることをお勧めしたいが、一度関係性ができると、なかなか縁を切るのは難しい。そして、「馴れ合い」が当然だと思うと感覚が鈍くなる。つまり、周りが褒めるばかりなので、自分は天才であると勘違いするのだ。これだけであれば、かわいい方だ。しかし、もっと恐ろしいのは「馴れ合い」による「相互評価」だ。
■コミュニティー内でのギブアンドテイク
小説投稿サイトが主催するコンテストには、足切りなどが存在するケースもある。有名なのは「カクヨム」で開催される「カクヨムコンテスト」だろう。作品が評価されなければ、それだけで中間選考を突破できない。ゆえに、コミュニティー内で評価しあう「相互評価」が常態化する。
しかし、よく考えて欲しい。中間選考を突破したとして、書籍化されるのは編集者の目に留まった作品だけだ。中間選考突破=書籍化ではない。ここを間違えてはいけない。もちろん、中間選考を突破できなければ書籍化されないが、コンテストによっては選考委員が「これは!」と思えば拾われる制度もある。「相互評価」をする前に、よく考えて欲しい。
■「相互評価」の成れの果て
コンテストでの「相互評価」に留まらず、おそろしい考えを持つ人をたまに見かける。それは、「Aというサイトでコミュニティー形成し、Bというサイトでの評価を依頼する」というものだ。たとえば、Tales内でのコミュニティーを形成したのちに、別サイトで新作を投稿した時に「こちらの作品を評価してください」と依頼して回るのだ。「馴れ合い」が発生したコミュニティーでは、協力しないと迫害される。そのため、次に自分が頼むときのために他者へ協力するのだ。
「評価依頼」をすれば、別サイトでランキング上位に行くだろう。だが、それは偽りの評価だ。そのようにしてランキングを駆け上がり、果たして何が得られるのだろうか。その先に書籍化が待っているわけではない。
■強制的にコミュニティーへ参加させる
ここまでは、自らコミュニティーに参加した場合の話だった。今度は、意図せずコミュニティーに参加してしまった場合の話だ。
たとえば、noteで作品を投稿したとして、ハートが付けば嬉しいのは誰しも同じだろう。ただ、ここで一回考えてみて欲しい。これは実体験なのだが、投稿して一分もしないうちにハートが付いたことがある。そう、noteでは本文を読まずに評価できる。つまり、気を引くためだけにハートを押して回るのだ。これに気付かないと「こちらもハートを返さないと」という考えに陥りやすい。ピュアな人ほど、この罠にはまってしまう。
巻き込まれる側ではなく、巻き込む側は質が悪い。その上、自分が有名人であるという誤解から解放されないのだ。
■コミュニティーをうまく使う
ここまで、コミュニティーに参加することは、百害あって一利なしだ、と書いてきた。しかし、何事も使い方次第であり、コミュニティーに参加すること自体を全否定するわけではない。
では、どう使えばいいのか。あくまでも情報網にとどめておくのだ。つまり、「Aというサイトで、ファンタジー作品のコンテストがあるらしい」という情報を手に入れるためだけに使うのが良い。自分が知らないサイトで告知があっても、そのサイト自体を知らなければ話にならない。全部のサイトを把握するのは難しい。そのため、情報交換の場としてコミュニティーに参加するのだ。
■まとめ
ここまでの内容を読んで、コミュニティーに参加するか否かの判断材料になれば幸いだ。読者がうまくコミュニティーを使うことを願ってやまない。
小説投稿サイトでの「馴れ合い」の弊害 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993
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