エピローグ 学校の噂
——翌日・夕暮れの公園
昨日と同じ公園。
同じ時間帯、同じベンチ。
三人は、静かな風の中で腰を下ろしていた。
蓮がタブレットを閉じ、小さく息をつく。
「……優斗くんの事件、調べてきたよ」
宗介は顔を上げ、目を細めた。
「……やっぱ気になってたか」
蓮は淡々と、しかしその声には温度が宿っている。
「優斗くんが言ってた落とされたって話。
当時の報告と照らし合わせても……一致してる部分が多い」
てんの手が、ぎゅっと自分の服をつまむ。
「……どういう……こと……?」
蓮は静かに続ける。
「不良五人に呼び出されて、屋上に行った。
落とすフリだけって笑われて持ち上げられて……
そのまま手を離された。
でも、不良たちはこう証言したんだ。
優斗が勝手にフェンスに登って、落ちたって」
宗介は思わず拳を握って立ち上がる。
「嘘じゃねぇかよそれ!!」
蓮は頷く。
「そう。でも大人たちは……その嘘をそのまま信じた。
子どもの悪ふざけの事故ってことで処理された。
学校は形だけのカメラと施錠を増やして……
結局、誰も責任を取らなかった」
てんの目が揺れる。
「……じゃあ……
優斗くん……ずっと……ひとりで……」
言葉が震えてそこで止まった。
宗介は悔しそうに地面を蹴る。
「ふざけんなよ……
あいつ……あんな優しいのに……
ふざけて落ちたとか……誰も信じてやらなかったのかよ……!」
蓮はうつむいたてんの肩にそっと手を置く。
「でも……優斗くん、昨日は違った。
ひとりじゃなかったよ。
ちゃんと僕たちと一緒に笑って……
怖いより、楽しいが勝ってる顔してた」
てんの目から、涙がぽろっと落ちる。
「……うん……
最後……ほんとに笑ってた……
すっごく……嬉しそうに……」
宗介は大きく息を吐いて、空を見上げる。
「生まれ変わったら……ちゃんと守るからな。
今度はアイツが怖い思いしないように……」
蓮は夕陽に染まる空へ視線を向けた。
「優斗くん……きっと、風になってどこかで見てるよ。もう苦しくない世界に行ったんだと思う。
……次は普通の放課後で会おうって言ったしね」
三人の間に、昨日とは違う静かな風が通り抜けた。
あの夜の冒険はもう終わったのに、
優斗の笑顔だけは確かに胸の奥に残っている。
夕暮れの公園には──
三つの影だけが伸びていた。
夜の探検隊 学校の七不思議の回 怪丸 巴 @shunp000
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