もう一つの地球生命
逆三角形坊や
もう一つの地球生命
赤外線が見えないように、超音波が聞こえないように、
人間の知覚には、そもそも処理できない帯域がいくつも存在している。
そのため、人類が「地球」と呼んでいるこの世界は、地球そのものの姿ではなく、
脳の処理限界によって圧縮された「限定的な風景」にすぎない。
本来の地球には、
我々の知覚の外側で活動する「不可視の生命圏」が広がっている。
我々は自分たちが地球の支配者だと信じてきた。
しかし、その「支配」は、人間の五感が届く範囲だけで成立する
局所的な領域の解釈にすぎない。
この惑星には、人類を含めた哺乳類の他にも、
鳥類・爬虫類・魚類といった様々な種類の生命が存在する。
虫や植物、菌類など、脊椎動物とは異なる姿をした生物たちも、
人類と同じ共通の生命系統を辿ってきた存在だ。
しかし、その流れから完全に外れたものたちがいた。
それは、我々とは全く異なる起源から派生した種族であり、
生命システムも、存在のインターフェースも、
人間が定義した「生命の枠組み」に当てはまらないものだった。
彼らは我々と、原初のつながりさえ持たない、もう一つの地球生命だったのだ。
異なる系統から派生した彼らは、
地球環境の中で、まったく別の進化を遂げていった。
触れられず、見えもせず、聴こえもしない。
生命活動の速度や、化学反応の基盤から、
我々が属する生命グループのものとは根本的に違っていた。
そのため、科学が発達した現在においても、
彼らの存在が認識されることはなかった。
我々が地球に文明を築いてきた間、
彼らも我々の知覚が届かない領域で、
別の地球文明を発達させていた。
やがて、その文明の中から、
この惑星の統率機構となる存在が誕生した。
彼らは現在も、この惑星全体を監視・制御している。
しかし、人類の誰一人として、その事実に気づけるものはいない。
そして彼らも、こちら側の存在に気づくことはない。
我々は互いに交わることのないまま、
同じ惑星を共有し、生命活動を進行し続けているのだ。
もう一つの地球生命 逆三角形坊や @gainenM
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