好き
読者さまは自分以外に、誰も納得してくれなさそうな理由で好きなものってありますか。
わたくし、もちだいこん・さくらはあります。マーモットという動物です。
マーモットとは、リス科の大形げっ歯類の動物です。大きいリスのようなルックスで、ふくよかなボディーをたぷたぷ揺らして仲間ととっくみあいの喧嘩する姿は一時期snsでバズりました。
え?
マーモットのどこが好きか…?
OK!
お教えしましょう。
隣の席の女子は、なんというか気性が荒い。口喧嘩で常に誰かを言い負かしており、一部のクラスメイトから反感を買っているが当の本人はどこ吹く風。あんま関わりたくねー。大して可愛くないし。はやく席替えしろ。そう思っていた。
あの日、一限目が始まる直前に
隣の席の女子が消しゴム忘れたから貸してよってわざわざ机くっつけてきた。
前の方の席のおれたちにイレギュラーが発生してもクラスメイトもなじってこないし教室の雰囲気は和やかでわるくないにおれは頭を掻きながら小っ恥ずかしくてからだをひねっている。にもかかわらず、隣の女子の威風堂々たる姿、敗北した気になる。ああ嫌だ。
授業がはじまってすぐ、今これ消しゴムを使うタイミングが被ってるて瞬間に女子は一重のアーモンド形の瞳でそろりとおれの様子を伺って伸ばした手を引っ込めた。
俺の消しゴムなんだから、俺がはじめに使うのは当たり前だろ。
「いいよ、使いなよ」咄嗟に口から滑らかに出た言葉は思考とは真逆の意味を成していた。断じてカッコつけてるわけじゃない。ただ隣の席の女子の普段と違った一面が物珍しくて、譲ってやってもいい気分になっただけだ。
「ありがと」
申し訳なさそうに消しゴムを先に使う隣の席の女子の顔をはじめて近くで見るはめになる。
近くで見たらかわいくないことないかもしれないな…
結局、1日中机はくっついたままだった。
さすがに、昼休憩中も机をくっつけていたらクラスメイトにからかわれたけど隣の席の女子がへらりと笑いながら「じゃあおまえらの誰かが消しゴムち切ってわたしに寄越せや」と低い声ですごんだので、クラスメイトは蜘蛛の子を散らすように退散した。
おっかねえけど、それより隣の席の女子が昼メシ用にファミマで買ったらしいメロンパンを両手で掴んでちまちま食べてんのにパン屑こぼさないの器用だなと思って見ていた。
…はい、これらは“あんま知らないし興味なかったマーモットのふいに見せる一面や仕草に惹かれてしまう人間の心理”になぞらえて
隣の席の女子マーモット化現象と呼びます。わたしがひそかに勝手に呼んでます。妄想ですが、どこかの教室でこういうイベントがあってもおかしくないはず。
マーモットは青春の香りと形をしているので好きです。
あなたさまは、わたしがマーモットが好きな理由に納得してくださいますか。
ほわほわいのち 鈴鳴さくら @sakura3dayo
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