虚無と安堵と

小学校に入学した。

一学年100人程度の田舎にある公立小学校。


1年生の時の担任の先生は優しい女性の先生で、パソコンがとても得意な先生だった。

当時にしては珍しく、これからの時代パソコン操作はとても大事だからと授業にパソコンを取り入れてくれたり寄り添ってくれる素敵な先生だった。


家が殺伐としすぎていたのもあり、唯一息を抜ける場所でもあった。


6年間楽しい毎日を過ごせるんだと、とてもほっとしたんだ。したはずだったんだ。



問題は多かった。

忘れ物も多く、集中力も続かず、あまり空気を読むのが得意ではなかったが周りの優しさや私自身の家での虚無を補うためのあっけらかんとした性格から穏やかな2年間を過ごした。


時は流れ、3年生

一つ目の大きな壁にぶち当たってしまった。

いじめだ。


きっと要因は色々あったんだろう、だが表立ってされたことは名前に対する弄り。

本当に嫌で嫌でたまらなくなり逃げ場もない私は登校を拒否するようになった。


今でも自分の名前は嫌いだ。思い出してしまう、あのときの孤独と恐怖を…目をつぶりたくてもがいている。


当時、父は変わらず朝早くから仕事に行っていて祖母は相変わらずの無関心。


家でただ一人ご飯を食べることもなくテレビを見る生活を送っていた。

家に響くテレビの音が虚しかった。


いじめ自体もブームみたいなもので思ったよりは長引かず5年生のクラス替えを機に、私はまるで別人になったようにクラスの中心で騒ぐタイプになっていた。数年前と同じように家に何も無い分、外で満たそうとしていたのかもしれない。

友達も多く、この時だけは楽しい時間を過ごした。


​後にも先にも、学校生活であんなに友達と話したのは、この時だったように思う。


​ここから、無理に張っていた心がどんどんと音を立てて崩れていく。


​5年生の時に起きた出来事が、私の心を蝕んでいくのだ。

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彷徨いと小さな紅葉 綾織 @ayaoris

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