愛玩用人類

逆三角形坊や

愛玩用人類

近年、宇宙圏では「品種改良された人間」が人気を集めている。

それは、地球人をトイプードルのように小型化し、異星環境に最適化させた愛玩用の人類だ。


事の発端は、20XX年に行われた史上初のオープンコンタクト。

地球外文明との異星間貿易が活性化し、双方は食料から文化財、動植物に至るまで膨大な種類の物資を交換するようになった。その中で宇宙文明が最も興味を示した対象が、人類そのものだった。


「人間を輸出品目に加えてほしい」

その要求は、地球側の法律と倫理の両面から明確に否定された。

しかし貿易の圧力と、宇宙マーケットでの圧倒的な需要予測を前に、地球は折衷案として「純正人類とは系統を分離した、人工種」を生産する方針へと傾いた。


こうして生まれたのが、後に宇宙中で大流行することになる「愛玩用人類」である。


彼らは、宇宙人たちの惑星環境に合わせて徹底的に調整された。

口にできる栄養源は彼らの惑星で流通する食材に限定され、住環境も宇宙由来の建築規格に沿って設計された。

身につける衣類は気候特性に合わせて選定され、価値観や概念体系も、宇宙側が提供した教育パッケージに置き換えられた。


興味深いことに、こうした宇宙文化のみで育成された人類は、なぜか生物学的に小型化していった。その理由は今も明確ではないが、栄養面、環境要因、思考体系、そのどれもが複合的に作用した結果だと考えられている。

いずれにせよ、この「小型化」は宇宙人たちにとって大きな魅力となった。


やがて品種改良された人間は宇宙で最も売れる地球産の生体商品となり、需要の拡大とともに、人類の姿はさらにカスタマイズされていくことになる。

宇宙人たちの要望は細かく、時には奇妙ですらあった。「もっと小さくしてほしい」「もっと鮮やかな色合いのバージョンもほしい」「もっと鳴き声を増やしてほしい」。そんな要望が次々と寄せられ、それぞれに合わせて人間の癖や反応特性、思考パターン、身体の特徴が調整されていった。


こうして宇宙全域に流通するようになった愛玩用人類は、もはや地球の人類とは似て非なる存在となった。

遺伝的には人間でありながら、文化的・環境的には完全な別種。地球と宇宙文明の狭間に生まれた、全く新しい「人類種」だ。


これが、彼らが生まれた理由だ。

そして今日も、3秒に1人のペースで、品種改良された人間が宇宙中で消費され続けている。

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