今日でお別れ
満月 花
第1話
姉が失踪してもうすぐ一年になる。
親が離婚してそれぞれ再婚し、新しい家庭に夢中。
私達姉妹は居場所が無くなった。
「大丈夫、私がいるから」
その言葉が、どれほど救いだったか。
二人で支えあって生きていた。
姉だって辛いはずなのに
いつも妹の私の心配ばかりしていた。
優しい姉。
勉強しか取り柄のない私の学費まで出してくれた。
私も出来るだけ姉の負担のないように頑張ったけど
それでもたくさん迷惑かけた。
「大切な妹だから、いいのよ」
そんな風に言ってくれる。
そんな姉が最愛の人に出逢ったと嬉しそうに報告してきた。
私は喜んだ。
姉が幸せになるならなんだってする。
紹介してくれたその人は
柔らかな笑みを浮かべる姉を常に気遣ってくれる、
穏やかそうな人だった。
紅茶を飲みながら、互いを顔を見合わせる幸せそうな
そんな光景にやっと姉が幸せになってくれると心から喜んだ。
2人で出かける時に私を連れて行こうとする姉を
説得して送り出す。
少し、寂しい
でも、そんな気持ちは些細なもの
姉が幸せになってくれる方が何倍も嬉しい。
その婚約者と幸せな未来を思い描いていたはずなのに
ある日突然失踪した。
他に好きな人が出来た、別れてというメールを婚約者に
ごめんなさい、探さないで、というメールを私に
信じられない、あの姉が?
姉の婚約者は時折、家を訪れる。
「失踪前、何か言っていた事はないか?」
結婚を心待ちにしていた姉、でもふと曇った表情を浮かべる時も
あった。
そう告げると、
やはり思い悩んでいたのだろうか?と返された。
姉の部屋から貴重品だけ持ち出して最小限の荷物だけを持って
出て行った形跡。
警察にも届けたが、事件性を感じられず
失踪という扱いになった。
姉の失踪して一年後になる今日、婚約者を自宅に招いた。
姉の持ち物を整理するからと
婚約者は姉の手紙、日記帳をめくりながら
思い出を懐かしそうに語る。
姉のお気に入りの紅茶を手渡しながら
今日で姉とこの部屋で最後の別れをして
あなたの道を行ってほしいと頼んだ。
婚約者は
一晩、彼女と語り合うよ、寂しそうに笑った。
カチリと音を立ててドアが閉まった。
……そして
カーテンの隙間から朝日が差す
紅茶の香りがまだ残っている姉の部屋で
婚約者が死んでいた。
姉を失ったその日に後を追ったらしい。
でも本当は
婚約者が姉を殺したのだ。
だっておかしいじゃない?
姉の失踪した前の事は聞いてくるのに
姉から連絡が来たか?とは一度も聞いてこない。
まるで、もう姉が生きていないことを知ってるように
昨日あなたが飲んだ、あの紅茶。
あなたが姉に渡したサプリメントを入れたの。
健康にいいから、と姉の身を案じて勧めてくれたサプリメント。
カプセルが苦手な姉が、飲んだと偽って貯めてたもの
そのサプリメントの純度を上げて混入した。
本当に健康のためならあなたは元気に起きてくるはず
害するものなら、あなたは起きてこない。
きちんと飲んでいるか確認してくる心配症の婚約者に苦笑しながら
私に内緒にしてね?と言った姉。
最後まであなたを信じていたお姉ちゃん。
「どう?もう会った?」
小さく笑ってカップを揺らす。
「これからはそっちでずっと一緒よ。」
カップの底に沈んだ紅茶に歪んだ顔が映った。
今日でお別れ 満月 花 @aoihanastory
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