慣用クラス

大河内雅火

慣用クラスの神野くんはチート能力でいじめっ子にざまぁする

「では、転校生を紹介します」


 入ってと担任の先生に促されて、僕は教室に入った。

 誰一人知らないクラスメイトの顔を見渡して、元気よく自己紹介をする。


「慣用クラスのみんな!初めてまして!

 僕の名前は神野かみのつかさ

 これからよろしくね!」

「え〜、神野くんの能力は『時は金なり』。

 時間を金に変えたり、金を時間に変えたりして時間を支配できます」

「僕、みんなの能力とかもっと知りたい!

 みんな仲良くしようね!」


 僕は最後にもう一度元気よく挨拶をした。


 こうして慣用句にまつわる能力を持つ生徒しかいないクラス、『慣用クラス』の一員になった。

 

 のだけど…………


「早く出てけよ!お前!」

「お前場違いなんだって、マジで」


 一週間後。

 僕は気づいたらイジメられていた。


「どうしてそんな酷いことを言うの?」


 僕の問いに、「お前はこのクラスにいていい人間じゃねぇからだ!」と返したのはクラスのリーダーの猿橋くんだ。

 猿橋くんは、天狗に変身できる『天狗になる』っていう能力を持ってるらしい。


「そんな!

 僕は歴っとしたこのクラスの一員なのに!」

「だから、お前にこのクラスの一員となる資格はないんだって!

 冗談抜きで!」


 今度文句を言ったのは、猿橋くんの親友、矢場くん。

 矢場くんは、投げた物が確実に狙った対象に当たる『的を射る』という能力だ。


「転校したばっかでこんな扱い……どうかしてるよ!みんな!」

「どうかしてんのはお前だ!

 このクラスから出てけって言ってるのが、わかんねぇのかよ!」


 猿橋くんは胸倉を掴んできた。


 イジメられた原因は多分、僕に能力がないと疑ってるからだ。

 このクラスの一員になって一週間経つけれど、僕はまだ誰にも能力を見せていない。

 それは僕の『時は金なり』はチート能力のため、あまりひけらかすなとお母さんにきつく言われてるからだ。


 だから二人は疑ってるし、気に食わないのだろう。

 

 僕はクラス全員の顔を見渡す。

 

 ほとんどのクラスメイトが懐疑的な目を向けてくる中、何人かは心配そうな表情を浮かべる生徒もいる。


 猫の皮を全身に被ってる『猫を被る』という能力の猫田さんや、常に頭が燃えている『顔から火が出る』という能力の日野くんなど、僕に仲良くしてくれた。

 

 僕はもっと友達を増やして、楽しい学校生活を送りたい。

 そのためには絶対にイジメなんかに屈しちゃダメだ。


「じゃあ、その資格があることを証明する!」


 僕はクラス中に聞こえる大きさで叫ぶと、猿橋くんと矢場くんの目を見た。

 驚いている二人に構わず、僕は堂々と宣言する。


「今から、猿橋くんと僕で能力有りのバトルだ!

 それで僕が勝ったら、このクラスの一員ってことを認めるんだ!」

「は?何言ってんの、お前……」

「二人は、僕が能力がないって思ってるから疑ってるんでしょ?

 正々堂々勝負で能力見せて勝てば、君たちも文句言えないはず!」

「いや、別にそうじゃ……」


 何か言おうとした矢場くんの肩に猿橋くんは手を置いた。

 うざそうな目つきで僕の顔を見る。


「その勝負、お前が負けたらどうなるんだ?」

「猿橋くんの言うこと何でも聞いてあげるよ」

「言ったからな?

 逃げんなよ」


 じゃあ、早速と構えたところで、学級委員の槌谷つちやくんが僕と猿橋くんとの間に仲裁に入った。

 槌谷くんは、はぁとため息をつく。


「ここで始めると、教室が壊れちゃうだろ。

 それにもうすぐ昼休憩も終わるし。

 放課後に校庭でやろう」


 迎えた放課後。


 校庭では俺と猿橋くん、矢場くんを囲むように生徒のギャラリーが集まっていた。


「では、能力ありのバトルを始めるよ。

 相手を降参させるか気絶させる、もしくは俺が勝ったと判断した方が勝利。

 校舎壊したり、無関係の人に迷惑かけたり、殺すのは反則で」


 槌谷くんは自身の能力、『釘を刺す』で俺と猿橋くんたちの首に釘を刺した。


「反則すると、その釘が頸動脈を貫くから絶対にやめてね。

 とりあえず、ルールはこれくらいでいいかな」


 ルールを聞いて僕はふぅ〜と深呼吸をした。

 近くにいる猫田さんと日野くんが心配そうに俺を見る。


「神野くん、無理はしないでね」

「猫田さん、大丈夫だよ。

 僕、こう見えて結構強いから」

「本当に無理すんなよ」

「心配しないで見ててよ、日野くん」


 槌谷くんはピーっと笛を鳴らした。

 僕と猿橋くんの顔をそれぞれ見る。


「準備はいいね?」

「うん」

「あぁ」

「よし、それじゃ笛の合図で始めるからね」


 騒いでいたギャラリーが静かになり、二人の間には緊張が最高潮に達していた。

 僕も猿橋くんも一心不乱に集中している。


「ピーっ!」


 笛の合図と同時に、猿橋くんは天狗へと姿を変えて空を飛んだ。

 僕は自分の未来の時間を使って手のひらに金の弾丸を作り、猿橋くんに向かって死なない程度の威力で撃つ。


「そんな豆鉄砲俺に届くかよ!」


 猿橋くんはヤツデのうちわで突風を起こし、弾丸を吹き飛ばした。

 そして、体勢を変えると僕に向かって猛スピードで急降下をする。


「俺はクラス最強なんだよ!

 お前みたいな奴に負けてたまるかよ!」


 猿橋くんは大きな拳を振りかざした。


「止まれ」


 その瞬間に僕は能力でさっきの金を時間に変えて、数秒ほどこの世界の時間を止めた。


「天狗ってよりも井の中の蛙だね」


 停止した時間の世界でゆっくり動くと、僕は猿橋くんに足をかけて転ばせた。

 倒れた猿橋くんの上に乗って、ヤツデのうちわを首元に当てる。


「動け」


 僕の声と共に世界の時間は再び動き出した。

 いつのまにか倒れてる上に馬乗りにされてる状況に、猿橋くんは……は?と唖然とした表情を浮かべている。

 ギャラリーも状況を飲み込めていないようで、シーンとしていた。


「どういう状況だ……?」

「転入したとき言ったよ。

 僕の能力『時は金なり』は時間=金として時間を支配する能力だって。

 いくら強くても、時間を支配する僕には勝てないね」


 僕は猿橋くんから離れると、審判である槌谷くんに話しかけた。


「このバトル、僕の勝ちでいいよね?」

「え、まぁ、そうだね」


 勝利宣言に再びギャラリーがざわつき始めた。

 僕は悔しそうに地面を睨んでいる猿橋くんの方を見る。


「では、約束通り。

 僕が慣用クラスの一員だって認めてよ!」

「…………残念だけど、それは無理だ」


 猿橋くんの反応にはぁ?と僕は疑問と怒りが混じった声を漏らした。


「約束と違うじゃないか!」

「そうは言っても、無理なもんは無理なんだよ!

 お前は慣用クラスに相応しくない!」

「能力使ったのに?

 まだ不十分だって?」

「そうじゃねぇよ!」

「じゃあ何でなんだ!?」


 僕が憤りながら訊ねると、猿橋くんはだって……となぜか申し訳そうな顔になった。


「だって『時は金なり』って、それことわざじゃん」


 

 

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慣用クラス 大河内雅火 @kozan0926

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