第26話ちょっとエッチじゃないか?
バスはあっという間に目的の場所に着いた。
そこには長くて綺麗な砂浜と透き通る海があった。
「人がいっぱいだね」
「あぁ」
砂浜にはたくさんの人が居た。
俺は人の多さに驚いき、千佳はすごく楽しそうにしていた。
「凌平早く行こうよ」
千佳は俺の手を引っ張って砂浜の方へと走って行く。
俺は人の多さと、千佳と手を繋いでいる事に動揺して何も出来ずに千佳について行くだけだった。
千佳は砂浜に入る前にいきなり止まって俺の方を見た。
「ごめんいきなり手繋いじゃって」
「いや、大丈夫」
嘘だ。全然大丈夫なはずがない。
前から思っていたのだが、千佳は1つの事に気を取られると他のことが考えられなくなる様だ。
千佳は俺に謝ると、俺の持っている千佳のバックからサンダルを出して履き変えた。
履いていた靴をビニール袋に入れてバックに戻すと砂浜へ入っていった。
「凌平聞いてよこの砂音が鳴るよ」
千佳の足元の砂からは確かに音が鳴っていた。
千佳が歩くたびにキュッキュッと鳴っている。
海に入る前から楽しそうにしていて俺も嬉しくなった。
あんなに楽しそうにしてくれると、誘ったかいがあるというものだ。
でもどこか少し無理に喜んでいる様にも感じられる程、大げさなリアクションだ。
別にそんなことを気にしても俺は口に出すわけがない。口にする理由がないのだから。
「凌平早く海入りたくない?」
千佳の切り替えは早かった。
少しだけ砂浜を楽しむと、もう海に入りたいらしい。
俺に質問の様に聞いているがこれは、早く入りたいと言っている様に聞こえる。
「そうだな、でも海に入る前に流石に着替えないとな」
そう言って俺も砂浜に入り、千佳と一緒に更衣室へと向かった。
俺は水着に着替え終わると集合場所にした海の家で待っていた。
俺は更衣室の前で集合したら良いと言ったが、千佳がどうしてもと言うので海の家で集合になった。
でも俺が海の家に着いてからもう10分ほど経った。
女性の着替えは時間がかかる事は分かっているし、日焼け止めなんかを塗っていたらより時間がかかるだろうが、明らかに遅過ぎて心配になってきた。
だから俺は入れ違いになる事も覚悟して更衣室まで戻る事にした。
戻ってみると千佳らしき、白のラッシュガードと白の水着を着た女性が金髪とパーマの男性二人に絡まれていた。
「ちょっと困ります。一緒に来てる人もいるんで」
「いやイイじゃん、君チョーカワイイし一緒に遊ぼうよ」
そんなことを言っているのが近づいている時に聞こえた。
でも明らかに成人はしてそうな人が、中学生の千佳をナンパするのはどうかと思う。
「無理です。一緒に来てる人がいるんですって」
「イヤ、そーいうのマジいいから」
ナンパをしている金髪の方の男性が千佳の腕を掴もうとした。
「あのちょっと俺の彼女になんかようすか?」
「なんだよ男と来てんのかよ」
二人組の男性達はすぐに引き下がってくれた。正直安心した。
もし言い返されたり、ないとは思うが手を出された時どうしようもなかった。
俺が安心していると俺の背中に柔らかい感触がした。
「あのぉ、千佳さん?」
「ありがとう、怖かった」
俺の背中に抱きついている千佳は震えていた。
俺は震えている千佳に何も言葉をかけることが出来なかった。
「ごめん凌平の言った通りにしてれば良かった」
千佳の震えは止まったが、まだ抱きついて離れてはいない。
それに俺に謝ってきていた。
「大丈夫だって、今回は俺が気づくのが遅かっただけだから。それにあんなのは予想出来ないって」
俺は千佳をこれ以上悲しませない為に、出来るだけ俺がかけれる優しい言葉をかけた。
千佳はそれを聞いて俺から離れた。
俺は千佳が離れたのを感じて、千佳の方を向いた。
すると彼女はもうすでにいつも通りの笑顔になっていた。
「ありがとう凌平、今度からはしっかり聞くよ」
千佳は俺の気が回らないせいで怖い思いをしたのに“今度”があるらしい。
俺は表に出さないがそれに嬉しいさを感じていた。
そして俺はあの二人に口走ってしまったことを思い出した。
「ごめん彼女って呼んじゃって」
千佳はそれを聞くとポカーンとしていた。
まるでそんなことがあったのかと言う顔だ。
「あぁ、全然、大丈、夫」
なぜカタコトなのかは聞かなかった。
でも不快には思ってなさそうで一安心だ。
「それはよかったよ」
俺が安心していると千佳着ていたラッシュガードのチャックを下ろし始めた。
「どうかな?」
千佳はチャックを下ろし切ると俺の方を向いて言ったきた。
正直なところかわいい過ぎる。
でもさすがちょっとエッチじゃないか?
もちろんそんな目で見てないが、イヤ正直今は少し少しだけ見ている事も否定できない。
でもそれを口には出来るわけがない。
いやでもなんと答えればいいか分からない。
「あの、待ってるんだけど」
「あぁ!ごめんつい見惚れてて、似合ってかわいいよ」
思っていた言葉より酷い言葉は出なかったが、いつもなら凄く恥ずかしいことを言ってしまった。
でも実際凄く似合っててかわいいのだ。
「そっか、よかった」
千佳はあの時と同じ顔をしていた。
俺の家に泊まった時、姉貴の服を着ている千佳を褒めた時と同じ顔を。
三年間の君への想い するめ @1225200
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