第2話:裁判はデジタルで
意識が浮かび上がる感覚。
「父さん、母さん、
まず、それ最重要な事だった。
「おまえの父はこの下だろうな。母と弟は多分上だが」
本来そのまま一人で消えるはずの独り言に知らない声が返答して来る。
見ると、知らない人に抱えられていた。
「……⁉︎」
思わず飛び上がろうとする。
「危ないな。私が手を離したら、自動で下の地獄に落ちるぞ。おまえはこの下に着くはずのヒトだからな」
そう言う人の服装は謎の帽子に赤い服。
よく言う閻魔、という奴ではないだろうか。
「地獄……?」
「そう言っているだろう? 何度も言わせるな。面倒だ」
なぜ、地獄……?
だが確かに、軍神となる存在があれば、逆もいるだろう。
死んだのだ、という感覚もあった。
下を見る。
地獄とは言うが、あの戦争下の大量の死体程に惨たらしいものには感じない。
そして下にはツノの生えた二足歩行の生物がいた。
現実には決して見ない、所謂、鬼、だろうか。
上は光っている。
きっと天国なのだろう。
だが、意味のわからない事が一つある。
「父さんはどうして……地獄?」
この人がもし閻魔、という存在なのだとしたら、それを決めているのはこの人だろう。
そう、小さい頃に聞いた話から決まっている。
「人を殺したからだ。どんな性格であっても、理由であっても、強制的に落ちる仕組みに最近したのだ。今まではそれでよかったのだが、戦争となると面倒が増えた……。前よりはマシなんだが」
人を殺したら、そうなる。
そう勝手になるようになってるのか。
「でもどうして? 国の為に戦ったというのに」
理解ができない。
その為に戦に行ったのではないのか。
「知るか。
薄く笑って言う。
なんだか恐ろしい。
「ねえ。えっと……閻魔様? 仮にここが地獄だとして、父さんを天国に行かせる代わりに、私が地獄に行くってできない?」
「できない。言っただろう? あそこはただ壊れた魂を戻し、初期化する為に、少し時間をかけないといけない者達が行くところだ。おまえは違う」
「え? でも、私は……」
私も、人殺しだ。
「おまえは本来、あそこの地獄よりも奥のところにいるべき者だな」
片手を開かし、手帳を開けて呟く。
「だが、それでは面白くないだろう?」
「え?」
面白い……?
それだけ?
「家族の虐待はなし。数人で追い込み、殺した訳でもなし。錯乱した訳でもない。壊れている、と言えるほど壊れてもいないようだ。さらに家族を殺したというのに、ドが付くほど家族好き。……変な奴だ」
閻魔様(?)には負けるよ。
そうは思うが口には出さない。
「おまえをそこに行かせない理由は一つ。おまえに当てはまるような場所があやふやだということ。さらに生きている期間がまだ短めだ。別の肉体に移らせても大丈夫だろう。だからどこかに転生させる」
「え?」
さっきから「え?」しか言っていない気がする。
「というのは建前で、ぶっちゃければ私の気晴らしの為に転生して貰う。返事は『はい』か『わかった』だ。それ以外認めない」
まず、意味がわからない状況だが、何かをすることになる、という事はわかる。
そして拒否権がないことも。
それならば、
「わかった。代わりに願い事を叶えて」
「なんだ? なにがいい? 力が欲しいとかか?」
「力?」
それは、戦う事になる、ということだろうか。
「ああ、安心しろ。そんなものはハナからない。今は平和そうだしな」
なにを言っているのかわからない。
とにかく……
「父さんが治ったら、母さんと功くんに会わせてあげて! それまで二人をえっと、初期化しないで、ください……。と、父さんの方も、二人に会えるまでは初期化しないで……」
この願い事が一番重要だ。
「わかった。忘れなければ叶えてやる」
「忘れないで! 絶対に!」
「最近ボケてきているのだ。騒々しくしたら、さらに悪化するかもしれないぞ?」
大丈夫なのか? この閻魔!
「ではな。行って二度来るな」
突然、背中を突き飛ばされ、意識が落ちた。
僕(私)は狂っているのでしょうか? 霜月神舞 @choko877
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