第15話 [歳の功]

 ミシェルが風呂に入ってる間、俺はバタピーをアテに部屋に用意された10年樽熟成のブランデーを少しだけロックで飲んでいた。シラフだと今の状況にビビってしまいそうで怖かった。


 相手がミシェル瑞穂じゃ無かったら、自分の勤めている会社の会長の孫娘に一目で気に入られて、会長の所有するホテルのセミスイートで同じ部屋で1泊…冗談ドッキリにしても悪趣味が過ぎるわらえない


「あら?今日はじゃないの?」


 長い髪の水気をタオルで吸わせながら、白いバスローブ姿のミシェルが俺をたしなめる。どうして惚れた女の風呂上がりの姿って、こうも美しいンだか。


「どうせ有給消化中明日も休みなんだ、追加で1杯飲んでも良いだろう?」


「なら、裕くんもお風呂入ったら?夜は長いんだしそれくらい良いでしょ?」


「じゃあ入る前に少しサービスしてやるか、化粧水貸して」


「え?化粧水なんかどうするの?」


 俺はミシェルを仰向けに寝かせて、ミシェルの顔を俺の手でマッサージする。俺の手の方が風呂上がりのミシェルの頬より温かく、ミシェルの瞳は少しづつとろけ始める。


「裕くん、マッサージの資格スキルあったの?すごく気持ち良い」


「嬉しくないだろうけど、元嫁に教え込まれたからね。これでも基礎から勉強したんだぞ」


「裕くんを捨てた元嫁さんは許せないけど、このマッサージを裕くんに教えたのなら許しちゃおっかな」


 嫉妬深いのかチョロいのか分からんな。俺はミシェルの肌に多目の化粧水で目の周りやほうれい線、アゴのラインを重点的にマッサージする。しかし、ミシェルのヤツ化粧しなくても良い素材してるなぁ。


「ふふっ何か嬉しいわ、裕くんにフェイシャルマッサージされるなんて思わなかった」


「意外だろ?」


「ええ、嬉しい誤算よ♡」


「ミシェル、ベースメイクをすっぴんに変えてみる?こんなに綺麗な肌なのにファンデで誤魔化すなんて勿体ないよ」


 ミシェルは俺に褒められて顔を赤くする、俺は素直に感想を言っただけだし無理して綺麗な肌を酷使するのは可哀想だと思ったからだ。


「そうだなぁ…疲れてたら目元のくすみ隠しとか、眉、アイライン、チーク、ルージュくらいがちょうどいいかもね」


「なんでそこまで詳しいのよ」


「んー…俺も分からんwでも、異性から見るメイクのあり方があっても良くないかな?」


「それはそうだけど」


「ミシェルはまだ20歳なんだから、必要最低限で充分だよ」


「もう、褒め上手なんだから。そうやって他の女をたらしこんだの?」


 こうなった時の女は何を言っても勝てないのは俺の持論、逆らわないのが俺なりの処世術ベストアンサーだ。


「綺麗なモノに綺麗と言って何か不都合があるのかい?良いモノは良いンだから仕方ないだろう」


「ふふっそういう事にしておくわ、でも、出来る限り私だけを見て欲しいな」


「それは無理だな、逆にその人のコーディネートやメイクがミシェルに合うかどうか投影するけど」


「もう、口が上手いンだから」

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恋は巡り廻る〜15年のギャップ〜 狸穴亭銀六 @ginnrokumamiana

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