Before Death episode no 23

Before Death episode no 23

ハイダーはハナの家に足を踏み入れ、シンプルでありながら温かみのある美しい室内を見回した。

「きれいな家だね」と彼は言い、バッグを下ろして、ハナが出してくれた抹茶ラテを一口飲んだ。

「ありがとう」とハナは小さく微笑み、向かいの木の椅子に腰を下ろした。

「お母さんはどこにいるの？」とハイダーが尋ねた。

「お店にいるわ」とハナが答えた。

しばらく沈黙が流れた後、ハナは少し身を乗り出した。

「封筒、持ってきてくれた？」

ハイダーはうなずいた。

「うん……これだよ」

そう言って、バッグの中から古い封筒を取り出し、彼女に手渡した。

ハナは丁寧に封筒を開け、書類をめくっていった。

そして、一枚の古い写真で手が止まった。

くせ毛の茶色い髪をした男と、その隣に立つ十歳くらいの少年。――その少年の目は、夢の中で見たものと同じだった。

「この子、誰？」とハナが静かに尋ねた。

ハイダーは一瞬ためらい、言葉を失った。

「彼は……」

「彼は……？」

ハナは不安そうに彼の顔を見つめた。

ハイダーはゆっくりとうつむいた。

「もう、この世にはいないんだ」と静かに答えた。

その言葉は、部屋の静けさに沈み込むように響いた。

ハナはまばたきもせず、写真を見つめ続けた。まるで、見続ければ少年がもう一度息を吹き返すかのように。

しばらく沈黙が続いたあと、ハイダーは深く息を吸い込み、低い声で話し始めた。

「彼は僕の弟だった。僕が高校二年のときに亡くなったんだ。母さんは…その悲しみに耐えられなくて、数ヶ月後に亡くなった。」

彼の声は少し震え、目にはかすかな涙の光が宿っていた。

そして、ハナを見つめながら言った。

「でも、どうして彼のことを聞くんだい？　どうしてこの封筒が欲しかったの？」

ハナは写真を握りしめ、小さな声で答えた。

「夢で見たの。草原を走っていたら、誰かの泣き声が聞こえたの。その声を追いかけていったら……木の下に彼が立っていた。」

彼女の声がわずかに震えた。

「目が覚めても……あの顔が忘れられなかったの。」