【企画】サークル内連続殺人事件

篠崎リム

名探偵 家津【サークル内連続殺人事件】

 とある大学のサークル内で、連続殺人事件が起こった。

 被害者はすでに四人。

 いずれも同じサークルのメンバーであり、警察は内部犯行の可能性が高いと見ている。


 現場を調査した名探偵・家津(いえず)は、被害者のリストを一目見るなり、口元に薄い笑みを浮かべた。


 「――ふふ、実に単純だ。犯人は、もう分かりましたよ。」


 被害者リスト:

 知鳥 優里(ちどり・ゆうり)

 林 圭吾(はやし・けいご)

 五里 らら(ごり・らら)

 楽市 宗田(らくいち・そうた)


 生存者:

 垂沢 悠真(たるさわ・ゆうま)

 薩摩 仁(さつま・じん)

 蝶野 美沙(ちょうの・みさ)

 真土 大地(まつち・だいち)


 ――犯人は、たった一つの共通点で見抜ける。


 家津は指先でリストをなぞりながら、にやりと笑う。


 「被害者が殺された“順番”と“名前”に注目してみたまえ。

  ほら、法則性があるだろう? ……そう、“しりとり”だよ。」


 「林圭吾の“林”は、“りん”とも読める。

  つまり――“ちどり ゆうり→ 林けいご→ ごりらら → らくいちそうた”と、見事につながっているんだ。」


 彼はリストをくるりと裏返し、今度は生存者の名を指でなぞる。


 「そして、この順に殺されたのなら、残された者たちも同じ規則で並ぶ。

  “たるさわ ゆうま→ まつち だいち→ ちょうの みさ→ さつまじん


  見事に“ん”で終わっているだろう?恐らく彼が犯人で最後は自死を選ぶつもりなのかもしれないね…」


 家津は、くすりと笑い、帽子のつばを軽く押さえた。


 「つまり――犯人は最後に残る“さつま”だ。

  この連鎖を終わらせる彼こそ、犯人だよ。」


 静寂。

 張りつめた空気の中、家津の声だけが滑らかに響いた。


 「――薩摩 仁。

  君の名前が、この物語の終わりを示しているのさ。」


 家津は推理の内容を語り、満足げに帽子を押さえる。

 こうして、薩摩 仁は逮捕された。

 彼は取り調べの間中、何度も「自分は犯人じゃない!」と叫び、激しく抵抗を続けたという。


 しかし――。


 数日後、再び悲報が届いた。

 生存者だった蝶野 美沙と真土 大地の遺体が、相次いで発見された。


 世間は騒然とした。

 推理の名手・家津が導いた

“しりとり殺人(笑)”の理論が揺らぎ、警察は急遽、薩摩の釈放を決定する。


 だが――その翌日。

 薩摩 仁は、自宅で遺体となって発見された。


 その報せを聞いた家津は、ただ静かに帽子を目深に被り、

 薄く笑ったという。


 「さて。次の舞台は、もう少し私の知性に敬意を払ってくれるといいのだがね。」


 そう呟くと、彼は人混みの中へと溶けていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【企画】サークル内連続殺人事件 篠崎リム @visions

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ