この作品はハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」をオマージュした作品です。
『九マイルは遠すぎる』はある一文から推測できることを考えていくうちに、ある真相に到達する、というミステリー作品です。
本作では、「42キロはキツすぎるって!ここ一ヶ月どんだけ頑張ったと思ってんの!」という会話文から、いろいろと推測していくことになります。
この推理が読んでいて確かにそうだなと納得できるものだし、真相も意外性があって面白かったです。
『神嵐館の連続殺人』を読んだ人にはまた見られて嬉しいと思うようなキャラも出ますし、あの作品を既読済みの方に特におすすめの作品です。
ストンと腑に落ちるラストがとっても心地よかったです。
「42キロはキツ過ぎる」。改めて突き詰めると本当に不思議な発言。
42キロと言えば、フルマラソンの長さで有名ですね。そしていかにもマラソンをしそうな恰好の女性が、「今まで頑張ってきたのに」とどこか苛立った様子で「42キロはキツすぎる」と口にしているという。
フルマラソンの長さなんてわかっているはずなのに、何を今更? それとも何か別の意味でもあるのか、と主人公たちはその理由について推理をしていくことに。
そして明らかになる真相。「ああ、なるほど!」ととてもしっくり来る答えでした。
一つの先入観にスポットを当て、答えがわかるとともに目の前がすっきりと開けるような感覚。
これぞ謎解きの楽しさだな、と嬉しくなるような、ミステリーの醍醐味を味わえる作品でした。