音声入力で小説を書く \検証試験

さて、デバイスの設定はこれで完了した。

早速、音声入力システムで使用して具合を試してみよう。


グーグルドキュメントを立ち上げる。

タスクバーのツールから、音声入力を選択――ん?

ない。

音声入力の項がなかった。


以前使っているので、間違った場所を開いているとは思ってないのだが、当然自分の記憶なんてあてにしてはいけないので、他のタブも開いて確認していく。

やはりどこにも音声入力の項は表示されなかった。


仕方がないので、ネット検索で調べてみる。


**AIによる概略**

グーグルドキュメントの音声入力は、特定のブラウザでしか使用できません。


なるほど。

俺が今開いているブラウザは、FireFoxであった。

これでは使えない。

ならば、ここは本家グーグルの純正ブラウザ、クロームに出張っていただこう。

グーグルのアプリケーションをグーグルのブラウザで使用するのだ。

問題が起きた時、切り分けの手間が一つ省ける。


この後、クロームを数年ぶりに起動してサインインするのに半日かかったのだが、どうでもいいや。


改めて、クロームからグーグルドキュメントを開く。

先程と同等にタスクバーのツールをプルダウンすると――ある。

音声入力があった。

クリックすればコントロールウィンドウが現れる。

アプリケーション側のセッチングもこれで完了。


では、ピンマイクをだるんだるんのパジャマ襟に引っ付けて。

音声入力開始。


***以下は実際に発した声を「発声」、出力された文字を「出力」と表記する***


発声:

あーあーあーあーあーあーあーあー音声入力テスト音声入力テスト音声入力テスト隣の客はよく柿食う客だあいうえおあいうえお


出力:

あーあーあーあーあーあーあーあー 音声入力 テスト 音声入力 テスト 音声入力 テスト 隣の客はよく柿食う客だ あいうえおあいうえお


************


おおお?

すごいぞ、おい。

単純なひらがなの単音、単語を組み合わせた複合語、早口言葉まできっちり拾っている。

しかも、漢字変換までほぼ完ぺきではないか!


流石に驚いた。

日本語をここまで高精度に読み取るとは。


欠点とすれば、出力に不要なスペースが挿入されていることであろう。

これには理由がある。

グーグルドキュメントは元々、英語音声入力のためのシステムだ。

単語と単語の切れ目に、自動的に半角スペースを挿入する仕様なのである。

そして、これが重要なことだが、日本語の句読点入力には全く対応していない。英語には存在しない記号、文法なのだから当然だ。


だが、今回はあくまで検証試験。

難しい問題は後回しにして、どれくらい日本語を拾ってくれるのかを、まずは確かめよう。


検証試験1:

方法:実際に小説の一部を音読してみる。

使用資材:自分で書いた小説。

特例事項:言葉を噛む、読み違えるなど、発声中に生じた問題は無視するものとする。

備考:自分で書いた小説なら、著作権とか気にしなくていいし、本文が手元にあるから比較検証も楽だ。


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試験結果:

音読対象:

厳冬の夕刻に至らぬの陽光の下、大地に底見えぬ大断裂があった。南北に地の果てまで続くそれは、一部にも拘らず長大となる範囲が灰色の人工物で埋められている。

 そこでは今、砲弾と爆撃が吹き荒れていた。

「奇襲ー! 奇襲だ! 総員退避!! 塹壕基地まで逃げ込め!!」

 大塹壕基地。

 大断裂を全長1500メートルに渡って埋め立て造られた大要塞が人工物の正体だ。

 だが基地の防衛戦力は次々と撃破されていた。

 一人の兵士が負傷した仲間を二人も引きずってトーチカへ逃げ込まんとする。

「まだか……!」

 だが歯を食いしばって安全地の目前まで来た時、後ろから地鳴りを響かせる敵戦車の進行音が近づいて来た。

「まだ来ないのか……!」

 死を目前にしながらもしかし最後まで目は閉じない。手は離さない。

「ちくしょうっ……!」

 その瞬間だ。

 敵戦車が撃ち抜かれた。

 衝撃と粉塵に瞑った眼を開いた先、西の断崖上に立つそれを兵士はを見た。

 戦場の煙で鈍る日の下で、なお燦然と輝く白の巨躯。小銃の様に120ミリ砲を悠然と構えるその姿。塹壕基地、ひいては西日本の最終防衛線の絶対守護者。

 その銘は。

「ガラティアン……!!!」


出力:

弁当の 夕刻に至らぬ 陽光のもと 第一に そこ 見えぬ 大断熱があった 南北に地の果てまで続く それは一部にも関わらず 重大となる範囲が灰色の人工物で埋め立てられている そこでは 今 砲弾と爆撃が吹き荒れていた 奇襲 奇襲だそういう対比 残光 基地まで逃げ込め 第3号 基地 大断裂を全長 1500m にわたって 埋め立て作られた 大要塞が人工物の正体 だ だが 既知の防衛戦力は次々と 撃破されていた一人の兵士が負傷した仲間を2人も引きずって トーチから逃げ込まんとする まだか だが歯を食いしばって 安全 地の目前まで引き続き後ろから地鳴りを 響かせる 敵戦車の進行 音が近づいてきた まだ来ないのか 死を目前にしながらも しかし最後まで目は閉じない 手は離さない 畜生 その時だ 敵戦車がぶち抜かれた衝撃と粉塵に目を瞑った 目を開いた先 西の 断崖 状に立つ それを 兵士は見た 戦場の煙で鈍る 火の元で なお 3000と輝く白の曲 小銃のように 120mm 法を 悠然と構えるその姿 残光 基地 ひいては 西日本の最終防衛線の絶対守護者 その名はガラテヤン


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分析:

長所:

・日本語の聞き込みはかなりちゃんとしている。

・単純な名詞、動詞は自動で漢字に変換してくれる。

・誤出力を推測で修正すれば、十分読める文章が出力されている。


短所:

・誤出力が多い。

・漢字の誤変換が多い。

・固有名詞は全く正しく出力されない。

・メートルなど、単位表記が記号になる。

・不要な半角スペースが高頻度で挿入される。


考察:

・日本語の読み込みに関しては、試験者の声質や発声などの関係が強く疑われる。

・自動変換は利点もあるが、それ以上に誤変換の短所が目立つ。

・固有名詞は、システムがそもそも対応していない。

・英語を入出力するためのシステムで、日本語を入出力する弊害が影響していると考えられる。


まとめ:

・このままだと流石に小説執筆には使えねかなあ!!


さて。

取り合えず、日本語を音声入力でどれくらい拾ってくれるかは、ある程度分かった。

駄目だとか言ったが、実際にこれで日本中の人が仕事をしているのだから、工夫すれば全く問題なく、むしろ便利に使用できることは最初から分かり切っているのだ。


次回からは、作業に使えるようにする工夫をひたすら試していこう。

調べて、試して、考えて、修正する。

そんなことしてる間に、小説を書いたらいいのにだって?

それはそれ。

これはこれ。

両手と脳が元気いっぱいのグッドヘルスマンは、親に感謝して置いてきぼりにするがいいさ。

俺はここで「どうなっても書き続けられるやり方」を研究するんだよ。

やんなきゃいけやいってことじゃあないが、やったことでどうにかなるかもしれねえだろ?

もしかすっと、俺以外の誰かにとっても。

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こんなの手の形をした肉塊よ! だったら声で書けばいいだろ! 底道つかさ @jack1415

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