AIとの付き合い方を考える

ここグラ

AIとの付き合い方

 世の中にAIが台頭してきてそれなりの時間が経ち、今や世の中はAI無しでは語れない状況になっています。文章生成にイラスト生成は当然として、動画生成にボイス生成etc……今の状況は恐らく多くの人達の想像を遥かに超えているでしょう。


 その圧倒的な能力と進化スピードに「人間の立場が危うい」という声を聞かない日はありませんでした。そして、遂に我々小説界隈にもAIの波が押し寄せてきています。最初は人間には勝てないと思われた部分も神速で克服し、今やAI小説がランキングの上位に入るまでになりました。


 AI小説についてのエッセイも日々増えています。それぞれの意見があり、改めてこの問題の難しさを痛感しています。否定するにせよ規制するにせよ棲み分けするにせよ、線引きの難しさやAIの圧倒的利便性がもたらす利益、小説に対する考えの違い等が複雑に絡み合い、どこからほどいたら良いのやら状態になっています。




 正直なところ、私もAIは使っています、情報収集や相談役としてですが。私にとってAIは秘書のような存在であり、創作の大きな手助けになっているのは確かです。秘書が傍で支えてくれるからこそ思い切り実力を発揮できる、こういう存在としてAIは適材適所だと思います。


 秘書の方が優秀? 参謀の方がトップより博識なんてことは珍しくありません、そもそも求められているものが違うのです。小説は知識比べの場ではありません、作家に求められるのは面白い小説を書くことです。


 知識は秘書であるAIに聞いて良いのです、相談に乗って貰って良いのです、ネット検索がAIに変わっただけです。我々作家に求められることはそれを糧に面白い小説を自らの手で書くこと、これだと思っています。




 面白い小説が生み出せるなら、それもAIに任せればコスパやタイパが良い? 読者視点からすればそうかもしれません。「要は面白い小説が読めれば良いんだよ、どこの誰がどういう想いを込めて書いたかとか知ったことか!!」、AIイラストが氾濫している今の状況を小説に置き換えただけでしょう。読者視点からのAI小説に関しては、他の方のエッセイに任せます。




 では、作家視点から見て私が思うこと、それは「それって楽しいですか? もったいなくない?」です。昔私が読んでいたミニ四駆の漫画で、こんな話がありました。ある少年A君は父親とミニ四駆仲間で、それを見たミニ四ファイター、つまりミニ四駆界隈の兄貴分のような存在の人は、2人に親子レースへの参加を勧めました。


 要は親と子供がタッグを組んで競うレースなのですが、大会当日A君は親が子供のマシン作成だけじゃなく、メンテまで代わりに行っている親子を散見しました。A君は「ズルいよ、大人が作ったマシンに勝てるわけないじゃん。よし、俺も」と父親にマシン作成を依頼しました。しかし父親は「お前、そんなこと考えていたのか!!」と怒り、喧嘩になりました。




 まあ、この2人はいわゆる喧嘩する程仲が良い的な関係なのですが、この会話を聞いていたミニ四ファイターはA君に「きっとお父さんは君にレースを楽しんでほしいんだ。マシンを作っていた時、何を考えていたんだ? それはつまらなかったかい?」と聞き、A君は気付きました。レースの楽しさは作るところから始まっており、そんな美味しいところを他人任せにしちゃもったいない、と。


 結局A君は自分で作ったマシンでレースに出ることになり、最初の方はやはり劣勢でした。ですが後半になり、マシンへのダメージ蓄積でアクシデントが発生するチームが続出し、【自分のマシンは自分で直さないといけない】というルールにより、親にマシン作成やメンテを頼っていたチームの子供は右往左往することに。




 一方でチャンスとばかりにA君は巧みな作戦変更と素早いメンテで逆転し、父親との息の合ったコンビネーションも手伝って、見事優勝を収めました。A君は正義は勝つと浮かれていましたが、父親が調子に乗ってないであれを見ろと指差した先には、先程右往左往していたチームの子供たちが楽しそうにマシンのメンテをしている光景がありました。


 ミニ四ファイターはA君に「きっとあの子達も次に会う時には強力なライバルになっているぞ」と言い、A君が「望むところだ!!」と言って話は終わります。要はミニ四駆を作ることの楽しさを知ったからには、あの子達は成長するぞってわけですね。




 上記の話、小説にも当てはまると思うんですよ。子供が我々作家、父親がAIだとしたら、さしずめAI作家ってのは父親にマシンとメンテを丸投げしている子供です。まさに【小説の楽しさは書くところから始まっており、そんな美味しいところをAI任せにしちゃもったいない】です。


 私とてPVや星は欲しいです、ランキングだって上位になったら嬉しいですよ。ですけど、それは自分で書いているから嬉しいんじゃないですかって話、だから胸を張って誇れるんです。父親に作って貰ったマシンで勝って、「見てくれ、これが俺の最高のマシンだ!!」って真の意味で誇れますか?




 何でもいいから勝てれば良い、上位ランカーになれれば良い、それならそれでいいですよ、現状ルール違反ではないですしね。ですけどAI作家さん、もし読者にこの作品の良さとか細かい設定とかこだわりとか苦労したこととかを尋ねられて、あなたは答えられますか? 出来たとしても、それを話してて楽しいですか?


 過程がある楽しさってそういうことだと思うんです、結果だけでは生み出せないものと言いますか。ですから私は今後もAIは秘書のような存在、要は補助的存在でい続けてもらいます。書くのは作家である私の仕事です、その楽しみをAIに渡すつもりはありません。私はAIを否定しません、どんなものもそうですが要は付き合い方です。皆様もどうか、自分なりのAIとの付き合い方を見つけてください。

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