第2話

「お兄さん暇ー?良かったらアタシとイイコトしない?」

見てくれはただの女子高校生、右手には不釣り合いなタバコを持った女はそこにいました。

「……なんてねっ!ジョーダンだよー!

あれ?ひょっとしてホンキにしちゃったの??お兄さんウブー!」

ひょっとしてこれは、ひょっとしなくてもこれは。

「馬鹿にされてる?」

思わず口から溢れてしまっていました。




少女は口から思わず零れてしまったような笑みを浮かべ、僕を見つめてきた。その瞳は少し潤んでいたような、そんな気がした。

少女はセーラー服、肩につくくらいのボブ、素足にタバコというまるで女子高校生のような、でもあやふやな姿だ。

「ところでお兄さん、こんなとこでなにしてんの?」

この子はきっとわかっている。目的がわかったうえで聞いているんだ。厭らしいやつだな。

「別に・・・。貴女こそなんでここに来てるんですか?」

年齢が分からないためか、それとも僕が圧倒されているのか。詳細は僕にもわからないが思わず飛び出たのは敬語だった。

「んーアタシー?私はねー・・・」

「いいや、どうせろくな理由じゃないんだろ?僕と似たようなところなんだろう?」

聞くだけ時間の無駄だ。それよりも今は新しい場所を探したい。

「いやいやいや、私の話聞いてよ。寂しいじゃん。会話しようぜ。」

ヘラヘラしている女子高校生の顔。なぜだか腹がたった。

「っていうかさ、お兄さん。敬語外しなよ。私だけタメとかなんかヤじゃん。」

ねーっ!と同意を求める少女には腹が立つが、憎めないところもある子なのかもしれない。僕はふとそう思ってしまった。





「お兄さんお兄さん

・・・コーヒー飲めたり・・・する?」

似合わなくもない上目遣いで僕を見上げるミツナは、つい先ほど調子に乗ってブラックコーヒーを頼んだばかりだ。

「まぁ…飲めなくはないけど…」

正直に言うと僕はブラックコーヒーが飲めない。

だが、僕よりも見た目が若い女に良い顔をしたかったというのが本音だ。

「っていうか金は持ってんだろうな。まさか僕にタカル気なのか…?」

目の前の女はニヤッと笑って「ゴチになりまーす!」と勢いよく両手を目の前で合わせた。


「そして、こんなとこまで連れ出して僕をどうするつもりか?

あいにくもう病院には通っているよ。金もないから宗教はお断りだね。」

やれやれと首を横に振ると、彼女は人差し指を突き出して揺らし始めた。

「ちっちっち。残念ながら私は取引をしに来たのです。

お兄さんの部屋にしばらく泊めてよ。」

「対価は…?」思わず唾をのむ。

「ア・タ・シ・の・か・ら・だ♡

イイコトしたげるよ。JKの身体自由にできるなんて、お兄さんにとってはまたとない機会でしょ」

しばらくの間、沈黙が流れる。

「本当に、女子高生なのか…?」

彼女はしまったという顔をし、灰皿を隠すように腕を覆う。

僕を見つめる目は叱られるのを恐れる子供のようだ。

「…はぁ。

別にタバコくらい怒らないよ、安心して。

ただ、身体を安売りするのはいただけないね。もっと別の対価はあるかい?」

少女は考えている。きっとすぐには思いつかないのだろう。

今まで通用した手がいきなり「ダメ」といわれるのは少し恐怖でもある。

彼女が熟考している間に僕は残り物のコーヒーを飲みほした。

「あ、思いついた。」




「私が満足したら、お兄さん殺してあげるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と地獄と少女 アマイシオ @zshia0305

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画