ステラと母

 ステラが目を覚ますと外はうっすら明るくなっており、ステラは自分がベッドに寝ていることに首を傾げたがすぐに心当たりがいった。


 これがいわゆる魔力切れというやつか……と合点がいって、そのまま布団の上で魔道書を取り出し後半の物語を読むことにした。


 意外にも読みやすく、ページを捲る手が止まらず、どんどん読んでいく。


 しばらくして、周りがずいぶん明るくなっている気がして、ステラはふと顔を上げた。


「おはようございます」


 ミリィは、三十分ほど前から部屋にいたが、ステラが声をかけても一向に読む事をやめなかったため静かに待機していた。

 ステラが集中すると返事をしないことはよくあることなのでミリィは気にしていなかったし、ステラはステラでミリィが部屋に入ってきた事は気配で気付いていたし、実際生返事はしていた。


「うん」


 ステラは、若干意識が切り替わっていなかったが、ミリィの言葉に相槌を返す。


「さぁ、お支度して朝ごはんです」


 ミリィに急かされ、ステラは渋々支度をする。


 朝食を終え、昨日の反省を踏まえて、ステラは魔力を小出しにして色々と試してみることにした。


 たとえば、【ファイア】で火を出すなら、ロウソクを灯すぐらい、とか、【ウインド】で風を起こすならそよ風、とか。


 その甲斐あってか、いくつかの新しい魔法を試すことができた。



 ステラは、疲れてきたら図鑑や物語を読み、気ままに魔法を小出しする生活を3日間続けた。

 その間、部屋にこもりきりだったため、四日目に母親が自室に乱入してきたのだ。


「ステラちゃん!最近全然顔を見てないけど、何かあった?」


 母マルシアは、アリスの熱が下がり、回復したことでステラの顔をみていないことに気がついたのだ。

 ステラもそのことがわかっていたし、それを気にしても仕方がないと諦めていたので、特に母の態度に対して何も思わなかった。


「特になにも」


 ステラ的には、魔法のある生活を3日過ごしており、ミリィとは魔法の話をしていたので、特に母に話したいことがなかったのだ。


「じゃあなんで顔見せに来なかったの?」


 なんとも悲壮感たっぷりのマルシアの言葉にステラはため息をつきたいのをぐっと我慢した。


 見せに行ったって、私の話は聞く気がないのに。


「さぁ?」


 マルシアは、今まで以上な娘との距離を感じた。

 それを埋めるためにもたくさん構ってあげようと意気込んでいたが、ステラは前世を思い出したことにより、より一層マルシアの態度が鬱陶しいと感じたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 20:00 予定は変更される可能性があります

ステラと魔導書と時々〇〇 羽入 満月 @saika12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ