12月31日15:00
家路 人外
白い猫
雨上がりで地面が濡れている。所々に水溜まりがある。俺はオレだ。高校三年生だ。校門を出る。学校が終わり帰宅するところ。
物体の間から柔らかい日差しが差し掛かってくる。母親に抱擁されている気分がして安心する。湿っぽい空気が優しい風に乗せられ、俺の顔を優しく包む。心が幼くなった気分だ。水溜まりに反射する日差しを見て幻想的に思えた。今だけは自分の世界に没頭中だ。学校で疲れた心を癒す。今だけ心のノイズを遮断したい。傍らで行き交う自動車の音は意識しない。ただ自然の環境音だけに意識を傾ける。
見慣れた景色、後ちょっとで帰れるという景色の合図に、俺は無意識に思考がそれに切り替わった。徒歩して10分が経った。行きと帰りの片道は20分かかる。景色を眺める。目には団地の住宅街が並ぶ。そびえ立つ団地を流し見して歩を速める。右折して団地を挟んだ街路樹を通る。道の横のスペースには石で出来た四角形の机と椅子が設置されており人が対面する配置になっている。その手後には大きな梅の木があり寂しいスペースに影を落としている。葉が揺れると木漏れ日がきらきらして心が癒された。
休暇したいので四角形の椅子に腰を下ろす。椅子の表面がひんやりしていて冬の季節の到来を感じた。
目を瞑って小鳥のさえずりを聴く。やはり幻想的だ。心がほっこりする。一分くらい瞑想を終えるととっさに立ち上がった。ふっ、神になった気分だ。
「よしっ頭が冴えたところで帰るか」伸びをして自転車で帰宅する学生の声を聞いて避難する。そのときふと猫の鳴き声が聞こえた。
「ねこだ」
12月31日15:00 家路 人外 @iejin_000
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