仮面が落ちる音を聴く物語

この物語は、ホラーの形を借りながら自己像の崩壊を静かに描いた作品です。
恐怖の源は怪異ではなく、主人公が長年まとってきた仮面が、ひとつずつ剝がれていく過程そのもの。
どれだけ都合のいい夢の中にいても、鏡だけは嘘をつかない……その観測構造がとても美しかったです。

読み進めるほど、恐怖ではなく「気づき」が来る。
そして最後に残るのは、赦しでも罰でもなく、自分で選ぶ最期の言葉。
作者の視点の鋭さが光る一編でした。