世界のどこにもなく、どこにでも繋がる宿『よりみち』。
その支配人である時任灯弥は、今日もお客を出迎える。
偶然にも『よりみち』に立ち寄った客は、過去や現在の自分の姿に気付かされる。
ある者は心が癒される安らぎを、ある者は心が砕ける苦しみを受けるが、それは客の生き方次第。
ときには軽やかにテンポよく、ときには詩的で重厚に紡がれる文章は読みやすく、それでいて不思議な世界観を醸し出す巧みさで脱帽。
お客をもてなす灯弥が用意するカクテルやウィスキーの香りや味わいまで想像してしまう描写も上手い。
少し疲れた読者の方も、ふらっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
きっと灯弥が素敵な笑顔で出迎えてくれるでしょう。
その先に待つものが癒しか苦しみかはあなた次第ですが。