第11話 花
地面が焦げ付いてる。近くの建物も黒く煤けてら。
けど、それもしばらく進むとなくなって、荒廃した景観に戻った。
そん中に俺が探してたもんがあった。
「お、あった」
フラワーショップ。店頭も店内も荒れちゃいるが、看板の字はまだ読める。
「お邪魔しまー……やっぱ枯れてんな」
プランターにも、植木鉢にも、あの日に見た花はない。
全部枯れちまったみたいだ。その残骸だけが腐ってどろどろに溶けてる。
それが土の匂いと混ざり合って、ずっとは嗅いでいたくねぇ臭いになってた。
「となると、種か。種はどこだ?」
「たぶん、保管されているから店の奥」
「だな」
虫が湧いてなきゃいいが。
とかなんとか思いつつ、店の奥へ行くと鮮やかな色が目に映った。
「――花だ」
一輪だけ、花瓶に刺さった花が咲いてる。
あの日に見た花とは違うけど、花は花だ。
「やっと見られた」
青い空、白い雲、咲いてた花。
これで見たいもんは全部見れた。
「感動してるところ野暮かも知れないが」
振り返ると、鳴坂が来てた。
「造花だぞ、それ」
造りもんの花。
だから枯れない。
ずっと綺麗なまま。
「いいじゃん、花は花だろ」
花瓶に近づいて、咲いてた花を千切る。
「ほら、紫暖」
耳の上のところに刺してやった。
「いいの?」
「あぁ、女にゃ花が似合うもんだ。このまま花瓶に刺さっててるよか花も喜ぶだろ」
「ありがとう。大事にする」
「おう」
やっぱ似合うな。
「用件は済んだな。なら、ここでお別れだ」
「あぁ、妹ちゃんによろしく言っといてくれ」
「妙な連中だったって言っとくよ」
最後に薄く笑って、鳴坂は帰っちまった。
妹ちゃんの居る病院に直行だろうな。
「私たちはこれからどうする?」
「そうだなぁ」
これから何をするにしても、もう外は暗いな。
「屋根もあることだし、とりあえず寝る」
「わかった。お布団を探すね」
「俺も」
本当は、まだ寝たくないんだけどな。
今日、目が覚めてからずっと楽しいことばかりだった。
座敷牢にいた頃にゃ、眠気が待ち遠しかったのに、今じゃ何時までも目を開けてたい。側に紫暖もいてくれるしな。
「紫暖」
「なに?」
「ありがとな」
紫暖は首を傾げてたけど、まぁいいだろ。
さて、明日はなにをしようか。
そいつを考えながら今日は寝よう。
明日が待ち遠しいなぁ。
人外魔境日本に転生したけど、自由気ままに楽しく元気に好き勝手やってます ~倒した妖魔を仮面にして世界で唯一の能力複数持ちに~ 黒井カラス @karasukuroi96
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