「……じゃあ、何でそんなこと聞くの ? 」

「実は…………」


 俺は、これまでのことを慎二に全て話した。同い年の従兄弟が急に亡くなり、自分宛ての手紙を叔母から渡され……――――そして【呪いの日記帳】のことも全て。


「マジで言ってる ? 一応確認だけど、担ごうとしてるんじゃないよな ? 」

「そんな訳ないだろう……冗談で、従兄弟が死んだなんて言わねぇよ」

「…………ごめん」



 沈黙が流れる。こんな突拍子もない話、信じられなくて当たり前だ。

 極々自然で、当然の反応だと思う。俺だって、逆の立場ならきっと同じような反応をするだろうから……


「大丈夫。……んでさ。

 赤坂の事を聞いたのは、そう言うことに詳しかったのを思い出したから。でも俺、あいつと直接の知り合いじゃないしさ」

「だから、仲良かった俺に連絡した訳か……従兄弟さんの手紙って今、持ってたりす ? 」

「あ、うん。説明するのに必要だと思って、コピーは持って来た」


 言いながら、俺は自分の横に置いていたリュックからクリアファイルに入れた手紙と同封されていた写真のコピーを取り出して慎二に手渡した。


「なんでコピー ? 」

「紛失したり、破損したら確認出来なくなると思って……それと、写真はともかく。


 手紙は、旬が俺に残してくれた最後の直筆だからさ。まぁ、内容はあれだけど」

「なるほど……」


 「お前らしいな」っと聞こえるか聞こえないかギリギリの小さな声でそう呟くと慎二は、手紙と写真へと視線を落とす。そして、驚いた表情をして固まったかと思うとバッと顔を上げ俺に言った。


「おま……これ、この写真 ! 赤坂じゃん ! 」

「え ? 」


 一瞬なんのことを言われてるのか解らず俺も固まったが、意味を理解した瞬間。背筋を氷で撫でられたような、悪寒が駆け抜けた。


「おいおいおい……マジかよ…………」

「じゃあ……赤坂が、死んだのって……」


 俺たちは、互いの顔を見て息を飲む。おそらく同じ考え似た取り付いてるであろうことを察しながら、それを直接言わないのは言ってしまった瞬間に認めることになる気がしたからだ。


 心のどこかで只の偶然だと思いたかった。突然の訃報に驚き、悲しんでいる暇もないままに亡き従兄弟から託された手紙の内容を信じたい気持ちと現実的ではないと否定する自分。

 その狭間で、それでも急に亡くなった従兄弟の死の原因を何かに擦り付けてしまいたかったんだ。だから、本当は手紙の内容も単なる偶然の一致で起こった悲しい出来事だったと思っていた。


 それでも、調べようと思ったのは旬の無念を弔ってやりたかったからだ。でも、ここに来て二つの死が繋がった。



 それが示す答えは一つ……――――【呪いの日記帳】は、本物の呪物だと言うこと。

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呪いの日記帳 遺恨 里 惠 @kuroneko12

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