第9回:『異世界三度笠無頼』の丈之助像
― 文章化のための素材リスト(箇条書き)
(-⊡ω⊡)_/ {まいど!
平素よりお世話になっております。美風慶伍でござんす。
全10回のエッセイ、その第9回、いよいよ、異世界三度笠無頼と言う作品についてお話させいただく段になりました。
最後までしばらくお付き合いの程をよろしく。
《いよっ! 美風屋!
੬ჴ ƠωƠჴჱ{ちょ、今の誰よ?
(´・ω・`){読者?
では参りましょう。
1:丈之助が持つ“渡世人の矜持”
丈之助と言うのはある意味、無宿渡世人としては筋金入りの人間です。
異世界三度笠無頼の中で、丈之助が一度死んで、冥界で〝渡し人カロン〟に出会った時、彼の言うことを丈之助は素直にそのまま聞き入れました。
それに対して、読者さんの一部から【丈之助の反応が淡白すぎる】と言う意見をもらいましたが、渡世人と言うのは土地土地の親分や兄貴筋、あるいは恩人の言うことに対しては、素直に従うのが絶対だからです。
『白い物を黒と言われたら、黒と呼ぶ』
これが渡世人の一番の原則なんです。
理不尽があろうが、無理があろうが、渡世人の恩義と仁義にすがって生きるなら絶対に曲げてはならない鉄則です。つまり、あの時、カロンに生き返らせてやる――と言う言葉に対して異論を一切挟まなかったのは、命を拾ってもらった恩義があるから、カロンの意見に従う義理と筋があるんです。
この〝義理〟と〝筋〟――丈之助の行動原則の全て。
今、本編では丈之助が最大の勝負に出ているはずです。そして、それはすべて彼の行動原則の義理と筋、そして恩義――それが全てです。
全くの別世界の人間である彼を受け入れて旅の目的地を教えてくれたコルゲ村の人々、
流れ者である丈之助を受け入れ居場所を許してくれたアルヴィアの下町の人々、
子分集の末席においてくれたホルデンズとその一家の人々、
丈之助が彼らのために動くのはすべて『筋』と『義理』なんです。そうするだけの恩義と仁義をもらったのだから。
彼の筋と義理と言う考え方に損得勘定なんかありませんし、見返りなんか求めません。
流れて生きる己を自覚しているからこそ、金銭的価値には目もくれない。
「無宿渡世人には金なんか使うところすら無い」
これは序盤で彼が漏らした言葉、しかし、逆を言えば、
「無宿渡世で生きるなら、金なんか要らない」
それが彼の無宿渡世人としての生き方であり矜持なんです。
だからこそ、金以外のものに価値を見出すんです。
仲間は裏切らない、借りは返す、恩は一生忘れない――、
そして、恩義の貸し借りを終えたら、それ以上引きずらず次の土地へと流れていく。
独り身であり、定住する場所も求めない。無宿渡世人と言う〝流れて生きる〟人間である以上、他人の事情には基本深入りしないんです。
では無情なのか? と言えばそうではない。
恩義を受け、人の情けにすがる事の暖かさとありがたさを知っているから、自分も恩義と情をわすれないんです。
「自分が背負うべき責任」を理解した上で行動し、見返りを求めず己の流儀により徹頭徹尾行動する。
恩義は貸し借りするもの、そして、時には施すもの――
みかえりを求めず情けを施すことで、それが回り回って自分を活かしてくれる――
それが世の
だからたとえばあなたが行きずりの日々の中で、丈之助と出会い飯で奢ったとします。
あなたにとっては些細なことでも、丈之助はそれを一生覚えているでしょう。
そして、あなたに何かあったときには駆けつけてくれるはずです。
それが丈之助の渡世人としての〝矜持〟なんです。
ჱჴ ƠωƠჴჱ{ 人情紙吹雪とは言うけど――
(-⊡ω⊡)_/{ 恩義と情を忘れたら人間終わりだよ。それを丈之助は骨の髄までわかってるんです。
何しろ、親の仇を討っても、認めてもらえないと言う理不尽に苦しんだ人間です。刑死のギリギリのところで生還して、渡世人という流浪の生活に逃げ延び、追って追われる地獄の毎日が始まった。だからこそ、土地土地での出会いや、世話になった恩人たち、その温情があるからこそ生きていられるということを彼は知っています。だからこそ彼は恩を返すんです。すなわちそれこそが彼の〝正義〟なんです。
2:江戸から異世界への価値観の持ち込み
さて、彼はなぜ最初のコルゲ村からあっさり旅立ったのでしょうか?
たしかに、村では歓迎されていなかった。彼のようなよそ者が居ると、村があらぬ疑いをかけられると言う事情もあった。
だがそれ以上の大きいのは――
「渡世人の仁義を受け入れてくれるような貫禄のある人物が居なかった」からです。
渡世人は行く先々の親分やそれに類する地位や勢力のある人物に頭を下げます。そうした人々に対して仁義を通すことで、恩義にあずかるわけです。
彼が転移した世界リーザングレイムス、その中で彼が最初に求めたのがつまりは渡世人にとっていちばん重要な〝貫録のある人物〟でした。
貫録のある人物に出会い、礼儀を守り、仁義を通す。滞在を許されて、寝食の場所をえて恩義を返す。
それができる人を探した――
ჱჴ ƠωƠჴჱ{それがホルデンズ
そして彼は勝負に出ます。そう〝軒先の仁義〟です。
ホルデンズの邸宅の入口にて、ホルデンズの子分たちに睨まれながら軒先の仁義を発して挨拶しました。この挨拶を受け入れてくれるか? それを彼は待った。
そして、ホルデンズは〝戦場の名乗り〟と言う形で、丈之助の渡世人の作法に答えてくれた、だからこそ彼はホルデンズの所に腰を下ろしたわけです。
すなわちこれは、師匠筋・兄弟分・一家の恩など〝江戸の義理ネットワーク〟を異世界でも踏襲した事にほかなりません。
それだけじゃない――
騎士社会の“上下関係”とは別軸の倫理で動きます。〝弱きを助け、強きに巻かれぬ〟というまさに江戸時代的な倫理観です。
ぶつけられた悪意や敵意は真っ向から受け止めて跳ね除ける。
そして、面子を潰されたなら、まさにその時こそ〝刀を抜きます〟 報酬ではなく“筋が通らん”から抜くんです。
(-⊡ω⊡)_/{ それは異世界の人々に騎士でも傭兵でもない“第三の価値観”として映るでしょうね
異世界では通じないルールを、それでも曲げずに貫く姿が魅力として昇華されているのが丈之助なんです。
3:義理と過ち、後悔の積み重ね
ჱჴ ƠωƠჴჱ{ とは言え、彼も何の後悔もなしに流れ歩いていたわけではありません。むしろ、後悔と蹉跌の連続でした。
幼い頃に母親を亡くし、父親と2人きりで暮らしてきました。
その父親も、丈之助が10歳の頃に、悪徳商人と地方役人が結託して、丈之助の親の家を焼き払い焼き殺すという残酷な仕打ちを受けます。
そしてそこから人の情けですがりながら生き残り、18の頃に親の仇である2人をうち果たします。
しかし彼の思いは通らない。
敵討ちが認められなかったのです。
(-⊡ω⊡)_/{ 江戸時代の敵討ちは何が何でも認められるわけでもありません。きちんと届出を出さなければならないのです。まともな教育を受けたことのない丈之助にそんなことがわかるはずがありませんでした。
(´;ω;){ かわいそうすぎる……
੬ჴ ƠωƠჴჱ{ こんなもんじゃないよ彼の人生は
役人にとらえられて、牢屋にぶち込まれます。本来ならばそのまま獄門台送りで死刑になる運命でした。
そこから、江戸表に送られて幕府に直々に吟味されるという流れになりました。
彼が殺した悪徳役人、その役人が普段から行っていた不正が明るみに出たからです。再度吟味する必要ありとなって江戸に送られることとなったのです。
(-⊡ω⊡)_/{ 江戸表送致というやつです
ところがその途中、川が豪雨で増水します。
そこで足止めされてしまい予定が狂います。
業を煮やした役人が川越を強行、鉄砲水が襲ってきて丈之助は流されます。
そしてその時、奇跡的に脱出することができたのですが、江戸送りの付き添い役人が立ちはだかり、そこで初めての自らの意思で、敵討ち以外の殺人を犯します。
当然逃亡、彼は凶状持ちと言う、今で呼ぶ全国指名手配になり果てます。
ここから彼の流浪と、役人たちに追いかけ回される、眠れぬ夜の逃亡人生が幕を開けます。そしてこれ以後、無宿渡世人となり、その旅の道程の途中で、さらに6人の役人を切り、彼は七人切りの役人殺しという重い運命を背負うこととなります。
一生どこにも安住できない身の上となってしまった彼は、ついに命を落とすこととなるのです。
それら江戸で斬ってきた七人の追手の存在――
それは丈之助の“業”を象徴でした。
丈之助の中には、今でも、彼らの最期の言葉が、丈之助の無意識に深い影響を与えています。
すなわち「あの時の決断は正しかったのか?」という悔恨です。
それは異世界で幻影となってまで、丈之助に“生き直す覚悟”を問いかけてきます。
過ちがあるからこそ、丈之助は、その過ちを乗り越えたいからこそ、誰かを助けようとするのです。
(-⊡ω⊡)_/{ すなわち〝贖い〟こそがどんな剣技よりも丈之助の人格を形作ったのです。
江戸での過去は変えられません。
しかし、一度は命をなくしたはずの男は再び生を得て歩き出します。
(-⊡ω⊡)_/{ まさに、異世界で未来を選び直すために――
それが、異世界における丈之助の旅路なのです
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エッセイ:無宿渡世人の世界 異世界三度笠無頼の歩き方 美風慶伍@異世界三度笠無頼 @sasatsuki_fuhun
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