第5話 仲直りのきっかけ

 今日も柔軟しているマファリ。そこへニルファーナがやって来た。


「……ルィミーナちゃんと喧嘩した?」


 いつもならルィミーナが苦言を呈しに来るが……全くマファリに近寄る気配もない。不思議に思ったニルファーナは視線を合わせるために座った。


「ねぇ、マファリ? ルィミーナちゃんと仲直りした方がいいよ?」

「……俺は悪くない」


 ニルファーナの視線に耐えられなくなったマファリはそっぽを向く。

 優しい笑みを浮かべるニルファーナ。


「マファリが悪いなんて言ってないよ。でもね?」


 マファリの頭を撫でて諭す。


「ルィミーナちゃんの気持ち、わたしもわかるんだ」

「え……?」

「その変な動きが大切な事なんだろうな、とは思うよ? でも……ルィミーナちゃんにとってマファリは特別なんだと思う。上手くは言えないけど……ルィミーナちゃんの気持ちも考えてみて欲しいの」


 マファリは今までルィミーナの気持ちを考えた事などない。全ては自分のため、そう思って柔軟をしていた。

 あの人たちのいない、この世界で独り生きていく事への恐怖、不安、絶望。これらからマファリは柔軟する事で逃げてきた。

 周りなんて興味ない。いや、周りの評価なんてどうでも良かったのだ。あの人たちがいないなら認められたいと思えなかったから……。


「ね? ルィミーナの気持ちわかった?」

「……わからない」


 首を横に振ったマファリ。それにニルファーナは微笑み抱きしめる。


「大丈夫、きっとわかるよ。ルィミーナちゃんを良く見て考えて」

「……姉さん」


 マファリはニルファーナの胸の中で目を瞑った。いろいろと考えて……。


「わかったよ、姉さん。少しだけ、本当に少しだけルィミーナを見てみる」

「うん! きっといろんな事が見えてくるよ!」


 マファリはその日からルィミーナを見かけたらさり気なく観察していった。

 するとどうだろう。

 ルィミーナは周りの子がマファリをバカにしていたら反論している。


「マファリはそんなんじゃないもん!」

「マファリはすごいんだから!」

「マファリは戦士になるもん!」


 マファリは、マファリは、と口に出すルィミーナ。どうして必死になっているのだろうか、わからない者には無視しておけばいい。そう思っていたマファリ。

 だが話を聞いていると、どうやらマファリは戦士になれない臆病者と罵られているみたいだ。

 マファリとしては別に言わせておけばいいと思っていた。だが、ルィミーナは違うみたいだ。


(どうしてそこまで反論するのだろう?)


 不思議に思うマファリ。ルィミーナの気持ちがわからない。

 どうして?

 ルィミーナはどうしてそこまで?

 疑問に答える者はいない。だが、マファリは1つ頷くと涙目になっているルィミーナの下へ向かった。


「誰が戦士になれないだって?」

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大草原に新たなる風が吹く 冬乃夜 @yukiya1989

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