第4話 2人の喧嘩
「むぅぅ~!」
頬を膨らませて駆ける少女ルィミーナ。茶色の髪をポニーテールにして目鼻立ちが整ったマファリの幼馴染。
他にも幼馴染はいる。ランドウェルは小さな部族のため、小さな子供たちを1ヶ所に集めて面倒を見る事があるからだ。
その中でもルィミーナはマファリがずっと気になっていた。
周りの男の子たちは戦士に憧れて取っ組み合いの喧嘩をしていた。だがマファリは周りに混じらず黙々と変な動きをしている。
最初は変な子だと思っていた。戦士に憧れないのだろうか、と。そんな子は戦士になれない。そう思うようになったルィミーナ。
興味から話しかけてみたが、マファリは無視してきた。それでもずっと近くにいて話しかけると反応が返ってくるようになる。
少しだけ嬉しくて家であるタンルットに帰り両親に話したほどだ。
長老は苦手だったが、マファリの話をする時だけは優しげな眼差しでルィミーナを見ていた。どうしてそんな顔をしているのかわからないが……次代の長老候補であったルィミーナに対して厳しい人で、怖い人といった印象だったのでとても驚く。
長老が認めているのだ、と理解した時にマファリと友達になろうと思っていた。もちろん断られたが……。
それでも諦める事はしなかった。ただ段々とマファリだけが孤立して、戦士に憧れない臆病者と罵られるようになる。
とても嫌だったルィミーナはマファリに剣や弓を持つように言うが……。
「お前には関係ない」
そう言われて終わる。今日もその拒絶の言葉で泣いてしまったルィミーナ。
それでも諦めない。きっとマファリはまだ戦士の強さを知らないのだ、と言い聞かせて……また明日も絡みに行くのだ。
「……ジジンさん?」
部族1の戦士(そんなジジンでも他部族には勝てない)がマファリの近くにいた。
そっと近づき、聞き耳を立てる。
「マファリ、お前は戦士にならんのか?」
そう言われたマファリの顔はルィミーナから見えない。
「……別に」
拒絶の言葉。
やはりマファリは戦士には憧れていない。
そう感じたルィミーナはマファリたちの前に飛び出していた。
「何で……何で! 何でマファリは戦士に憧れないの! 男は強い戦士にならないといけないんだよ!? そうしないと……みんな奪われちゃうんだよ!?」
涙を堪えてルィミーナは叫ぶ。これに驚いたのはジジンでルィミーナの想いがわかった。
ジジンはマファリを見るが平然としている。ここは何か言ってやるべきだ、そう思ったジジンだが……一足遅かった。
「なぁ、ルィミーナ……強さって、何だ?」
「えっ……?」
マファリの質問がわからず固まるルィミーナに少しだけ呆れながら、目を見て告げた。
「全て勝つのが強いのか? 誰にも負けないから強いのか? 俺はな、ルィミーナ……強さっていろいろな形があると思っている」
とても遠い目をしたマファリ。その目はここではないどこかを見ている。ルィミーナはマファリが遠くへ行ってしまいそうに感じ……。
「マファリは……ううん、何でもない。ごめんね、私は……うぅぅ」
ルィミーナはマファリの前から逃げた。それを追おうともしない姿にジジンはため息を吐く。
「マファリ……」
「……俺は悪くないです」
そして数日、ルィミーナはマファリに近づかなくなった。
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