浦島

yasunariosamu

第1話

「もう少し真ん中じゃないですか?」

「いや、真ん中すぎるとダメなんです。ほら。」

「ああ、あの線の辺は、来ないんですね。」

「そうなんです。だから、真ん中から少し外すことが大切です。」

「でも、あれは少し大きすぎるんじゃないですか?」

「そうですか?大きすぎますかね?」

「ほら、いま、明らかに避けましたよ。」

「確かに。」

「ほら、次も。」

「本当ですね。」

「私もあの大きさを試すのは初めてです。うまくいってくれるといいんですが。」

「もっと小さいやつの方が確実じゃないですか。このままだと日が暮れちゃいます。」

「そうですね。」

「あ、動き出しましたよ。」

「すみませんちょっと行ってきます。」

「はい。」

「ダメですね。やっぱりダメでした。」

「私も、あれに手を出したことはありません。固いですからね。」

「でも、よくあんな大きいのをあんなところまで持ってこれましたね。」

「いえ、大したことはないんですよ。自分で、あっちからあっちへ歩こうとしてたんです。」

「そりゃまた。あっちからあっちですか。」

「そうなんです。だから私は、こっちからこっちへ行くように少し誘導しただけです。」

「なるほど。」

「ああ、またダメですね。」

「そういえば、さっきより左に寄せましたけど何か意味があるんですか?」

「いえ、あそこ曲がってるでしょ。見にくいかなって思って。」

「ああ、頭いいですね。」

「あ!人間が来ますよ。」

「子供ですね。」

「あ!」

「川に投げちゃいましたね。」

「川に投げちゃいました。忌々しい。」

「あんな奴助けたって、碌なことはないのに。」

「本当。浦島がどんな目にあったか知らないんですかね。」

「本当です。そろそろ、田んぼに行きましょうか?人間どもが働き始める時間です。あんな大物はいないですが、カエルならゾロ出て来ますよ。」

「もう、そんな時間ですか。それは急がないと。」


それをを見て、亀が川の淵からのっそりと出てきた。

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浦島 yasunariosamu @yasunariosamu

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