第12話 境界なき継承

 夢の中で、”奏多”に会った。

 会うなり、抱きついてきた。


「全部、解決してやったよ。だから、代わろうぜ」

 “奏多”に向かって、俺はそう言った。


 すると、”奏多”が首を横に振った。


「ううん、これからも一緒に生きよう」


 ── は? 意味がわからない。

「だって、この身体はお前の── 」


 すると、”奏多”が抱きついてきた。

「全部、見てた。全部── 」


 感動して、”奏多”が震えていた。


「最高だよ。だから、もっと見せてよ」

「え? 何言って── 」


「俺は、── といつも一緒にいる。同じ”相馬 奏多”として生きているんだ」

「いや……本当に意味がわからない」


「だから、頑張って。”相馬 奏多”の続きを見せてよ」

「はあ……え?」


「楽しみにしてるから」

 そう言って、”奏多”が俺の胸を強く押した。


「いつも── のそばにいるよ」


◆◆


 翌朝──


 目が覚めたら、日差しが眩しかった。

 見慣れない部屋── そのわりに、違和感はなかった。


「よ、お目覚めか?」

 知らない人が、コーヒーを運んでくる。


 知らない部屋、知らない人── でも、知ってるような気もする。


 だから、思わず聞いた。

「あんた、誰?」


                    完

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愛のない世界に、愛を想う  ―Two lives, one fate.― @Noir_Ciel

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