すごく面白い! 明治初期の大阪を舞台にした歴史ファンタジー

 異世界ファンタジーの書き手、ウシュクベさんが初めて書かれた短編小説です。
 本作はスピンオフで、本編は「星の放浪記シリーズ」ですが、短編だけ読んでも、まったく問題ありません。
 実は、前に、「長編二つだけだと、読みに来てくれた方のハードルが高いですよ」とお話したことがあったのですが、おそらくはそれで本作を執筆して下さったのかな? と思います。
 ですが、一読して驚きました。とても面白い。キャラ造形、文章、構成、ともに申し分ありません。特に、キャラがよい。主人公の官兵衛、その父、母、怪しいまじない師、どのキャラもコミカルで憎めません。お話自体は、危ないホラーチックなストーリーなのですが、読み口は軽やかで楽しいです。
 多分、「星の放浪記」の舞台で咲いていたのだと思われる魔性の花「レッド・ベラ」が、植物学者の父によって官兵衛の自宅に持ち帰られ、庭の大木に寄生してしまったことで巻き起こった大騒動。

 これをとっかかりに、本編も読んでみようかなー、と思える、優れた誘因の一作と言えるでしょう。
 これは本当にお勧めです。