キラキラ
@chun1026
キラキラ
何者かになるなんて、やめた。
離婚して早2年、現在の空回る状況に笑えもしない。
私は海に潜った。
深く、暗く、冷たく、恐怖すら感じる。
周りは何も見えず、もがいているけれどその姿さえ分からず、息も絶え絶えに苦しくなってきた。
それでもとりあえず泳いでみる事にした。
目の前は漆黒で、今に見たことない怪物のような魚や蟹や何かも分からないような生物にぶつかるかもしれない、異世界に弾かれるような疎外を、水圧による身体の重さを感じつつ、
途端に私はこの広い海の中でひとりなんじゃないかと
そんな絶望と孤独と無意味をみた。
脱力した。
そうなんだよな…とか思いながら。
時が止まるような気がした。
その途端、水面がキラキラするのが見えた。
光が差し込んで、海底がスポットライトみたいに照らされて。
とても綺麗だと思った。
私の顔面に水面の斑点がキラキラ彩る。
思い出した。色んな瞬間を。
胸がギュってなって、フワって匂いのようにあの日々の思い出が漂って、なんとも甘いような苦いような、一瞬、幸せな感覚がした。
しばらく漂っていた。
波に任せてゆらゆらと。
不思議と息苦しさも和らいで、身体の重さも楽になっていた。
その時、大きな手が、ザバン、と豪快に私を両手ですくいあげた。
いきなり陸にあげられ、何がなんだか分からない私に、空の上からニョキっとそれは顔を出し言った。
「早く起きてよ〜」
顔を見上げるとそこにはふたつ並んだ大きなほっぺたに半月を描いたような、末っ子娘のいつもの笑顔があった。
目が覚めた。
そこにはいつもの光景がある。
「お腹すいたよ〜」
バタバタと私の周りを駆け回りながら娘が叫ぶ。
私はうっかりうたた寝をしていたようだ。
窓から日差しがベッドまで差し込んでいて、それがカーテンで揺れるたびにキラキラしていた。
綺麗だと思った。
温かい光にいつもの日常に、ホッとしたのかげんなりしたのかよくわからない気持ちだったが、
きっとこれからも、大波が押し寄せるであろう大海原で、私の不安定な人生はこの娘達にすくわれるに違いない。
キラキラ @chun1026
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます