五分前に出来てても何らおかしくないほどにエキサイトな世界。


 今、私がレビューに使っているスマートフォン。
 空を飛ぶ車が出る前に、この万能物体が登場し、世界中で利用されることを誰が予測できただろうか。

 ポンコツロボットが出来る前に、ハーバード大並みの人工知能が出来ることを誰が予測できただろうか。

 当たり前は崩れ、革新的な何かか絶え間なく押し寄せる世界。

 昔の流れを振り返りつつ、このエキサイトな動きの先を眺めてみる。



「世界五分前仮説」なんて言葉がある。

 世界は常に五分前に出来上がる。
 そして、今までの記憶は辻褄が合うように移植されたものではないか、という思考実験だ。
 もちろん、荒唐無稽な話である。

 AIの素となるパーセプトロンは1950年代には発表されていた。
 スマートフォンにしたって、技術的に可能になるまでに多くの要素が積み重なっている。
 もちろん「すべての事実」は上記2つ以外にも膨大な数ある。
 その連鎖を辻褄の合うように作ることは実質的に不可能だろう。
 不確定なことがあまりに多すぎる。

 とはいえ、そんな荒唐無稽な発想すらも信じたくなるほどに、今の時代はハイパーになっている。
 自分はこの作品の想定読者より、一回り二回りは若いが、それでもかなりのショックに揺さぶられている。

 文字通り「想定の範囲外」だ。その先が喜劇か悲劇かも、当然分からない。

 しかし、時代の色はおそらく残る。1990年代後期〜2000年代前期に「世紀末」、美しい破滅を描いたアニメが多数存在したように、
 おそらく私たちは、結果的にどうなろうとも「アフター〇〇」という言葉とともに、その色を、世界を振り返るのだろうと思う。

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