時代の変化に対する深い考察と、ご自身の経験と結びつけている点に
- ★★★ Excellent!!!
時代の変化に対する深い考察と、それをご自身の経験と結びつけている点に大変興味深く感じました。特に以下の点が印象的です。
激動の昭和を生き抜いた世代をダーウィンの進化論の引用(「変化に最もよく適応したもの」)で評価されているのが秀逸です。お父様を「ダーウィン的偏差値80」と表現するユーモアと尊敬の念が伝わってきます。
冒頭の「30〜50年前」という、あえて近すぎず遠すぎない時代を区切った理由付け(マーケティング戦略)も、書き手が読者層を意識していることが分かり、説得力があります。
「テレビの世界からプロ野球中継というものがこれほど消えようとは思いもよらなんだ」という指摘は、多くの同世代の読者が共感できる「隔世の感」でしょう。
かつての夜の「時間割」の具体的な例(ワイドショー、時代劇、アニメ、プロ野球、映画)の羅列は、当時の生活や家族構成(一家に一台のテレビを共有する時代)と娯楽の配分を鮮明に描き出しています。
この時間割を振り返ることで、コンテンツが特定の世代や性別に向けてゾーン分けされ、家族が同じ空間でそれぞれのコンテンツを待っていた光景が目に浮かびます。
プロ野球中継が夜9時まで続き、さらに「プロ野球ニュース」を見ていたという記述は、当時のプロ野球が国民的娯楽の中心であったこと、そしてそれが家庭のムードにまで影響を与えていたという、今では考えにくい「支配力」をよく表しています。
全体として、個人的な回想録でありながら、その裏付けとして社会の大きな変化を捉える視点が組み込まれており、ノスタルジーを感じさせつつも、単なる思い出話に終わらない深みがあり、大変面白かったです。