手紙っていいよね、と思わせてくれる物語

 この物語は誰かが書いた手紙の文章から始まる。

 この手紙を書いた人が古本屋で偶然、主人公が好きだった詩集を見つけたという話から始まり、ある二人のカップルの思い出話が手紙という形式で語られていく。

 読んでいくうちに、なんとなく感じてくる。
 ああ、この手紙を書いた人はおそらくもう……と。

 手紙が終わると、それを読んでいたある人物の心情や彼が見ている景色のことが語られる。
 とても鮮やかな文章で心理描写や情景描写が紡がれていて、彼の切ない思い、そして手紙をもらってから経過した時間の長さなどが如実に伝わってきました。

 最後まで読んで、悲しい物語だな、と思いましたが、それだけじゃなく、どこか爽やかさや温かさも感じられる、読後感が素晴らしい作品でした。

 今は手紙なんてほとんど書かず、チャットツールなどで会話をすることが多いと思います。
 しかし、手紙で伝えるからこその良さがある。
 それを再認識させてくれた物語でした。

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