スマホ、なし。性欲、あり。

失踪アンダンテ

第1話「イキゴロシ」

クソっ。


マジかよ。



やる気が起きない。

勉強?やらんやらん。

風呂?入らん入らん。


「こういうときはいつも…」

俺はズボンのポッケを漁る。


「でもねえもんなあ…スマホ」




時は1日前。


食卓を囲んでいた時だった。


「お前、塾の宿題、やってないだろ」

「うっ…」

「電話が来たんだよ、宿題忘れてますって」


内心、終わったと思った。

この件で怒られんのはこれが初めてじゃないし、声のトーンとかマジだし、今年受験だし。


「お前、このままでいいと思ってんのか?」

「…」

「…スマホ、預かるからもってこい」

「…うぇーい」


スマホ没収。

やはりそう来たか。


俺はなるべく平常心を装い、自室へとぼとぼと戻る。


扉を閉め、鍵を閉める。


そこから、俺のスイッチが入る。

「スマホの電源を確認!パスワードを変更、アダルトサイトへのログインは全部ログアウトしろ!」


俺は冷静に対処した。

タイムリミットは長くても5分。

その間に全てのタスクを行わなくてはならない。


そう、俺、思春期男子。

エロ大好き。


スマホには数々のエロ。

俺の好みのエロ。

二次元、三次元のエロ。


要は金脈だ。

毎月3000円の小遣いを使い、俺はたくさんのこの財産を得た!

スマホの代金プラス俺の注ぎ込んだ4万ほどの財産の付加価値がついたコレを!

俺は今から手放すことになる!



今からバックアップを取っても、もう遅いし、そもそもデータの移動先がない。


友達と連絡?

そんな物はエロと天秤にかけたら軽いに決まってんだろ!

決して友達がいないとかじゃない!



だから!せめて!せめて親の手にこれを預ける前に!

できる限りの証拠を隠滅しておくんだ!


タスクを終えた。

俺が課金してたり、アカウント作ってたりしてるアダルトサイトは全部ログアウトした。


「あとは電源落として…」

画面が暗くなり、ボタンを押してもつかなくなるのを確認して、俺は父親にスマホを渡した。



「しばらくしたら、返す」

期限、無し。

無期懲役。




そして今である。

1日煩悩を無くされたお坊さんみたいな生活をして、分かった。


俺には、エロが必要だと。



ひもじい性生活を、俺は脱却する!


俺の決意が、固まった。

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