平家物語は様々な有名人が登場しますが、平経正については知りませんでした。
しかしこれ程平家物語の描く諸行無常を体現した平家物語的な人物はいないと思います。
琵琶について突出した才能を持つ主人公と、彼の才能を見出す僧侶覚性との絆はとりわけ胸を打ちます。
「鍾愛」という言葉も初めて知りましたが、その愛はなんと尊いことか。
芸術のために死ねたならまだ幸せだったでしょう。しかし時代は貴族から武士のものへ。彼の生まれと時代が、それを許しませんでした。
芸術に炎のような情熱を持ちながら水のように静かに運命に従う経正の姿に、誰もが涙せずにはいられません。
本作は、カクヨムの公式自主企画、「カクヨムプライベートコンテスト2025【テーマ:BL(全年齢対象)・ブロマンス】」の参加作品です。
「ブロマンス」という単語に初めて接したのはここカクヨムでしたが、天下の角川がラ抜き言葉を使うのかと本気で勘違いしていたレベルの私にとって、歴史物の大家・四谷氏がこの企画に参加されるということがまず驚きでした。
しかしよく考えれば、「男性同士の親密な関係」は歴史上決して珍しいものではありません。まして史実の隙間を埋める傑作を生み出してきた四谷氏と、行間を読むのが命のBL・ブロマンスなら、相性抜群のはず。
そんな本作で描かれるのは、『平家物語』のエピソード。平経正(有名な敦盛の兄)と仁和寺の覚性法親王の間に生まれた、数奇なる関係が題材です。
幼い経正の才能を見出した覚性は、琵琶を介して師弟関係を築きます。やがて長じた経正は、いかに覚性が自分の才を高く評価してくれていたかを知りますが、歴史のうねり、源平の争乱は、経正を文雅の道にとどめおくことを許しませんでした……。
戦に散った平家の公達の悲劇といえば、経正の弟の敦盛の方が有名かもしれません。しかし兄にも、『平家物語』に書き記されるほどの悲しい物語があるのでした。
そのエピソードを、ブロマンスという視点で捉え直した本作。歴史好きの方はもちろん、「師弟関係」にぐっと来る方にもおすすめできる一作です。
戦乱の時代にも、芸術と敬慕は静かに息づいている――🌸🎐
『鐘愛(しょうあい)』は、平安末期の武士・平経正と、仁和寺の門跡・覚性法親王との深い絆を軸に、戦乱の中で交わされた芸術と想いを描く、静謐で美しい短編歴史小説です📖✨
経正は幼少期に仁和寺へ稚児として入り、覚性法親王に琵琶の才を見出され、名器「青山(せいざん)」を授かるほどに慈しまれます🎼💫
しかし、源平合戦の波に巻き込まれ、武士として戦場へと向かう運命に――⚔️🌫️
平経正と覚性法親王の絆が、音色と記憶となって時を超えて響く――そんな余韻に満ちた、心に残る歴史ブロマンスです📖💠
四谷軒さんの最新作は、ブロマンスの歴史小説です。
これがまた素晴らしかったです。安定のクオリティですね。
主人公の経正は、8歳のときに稚児として仁和寺に入り、その主である覚正の寵愛を受け、類まれな琵琶の才能を見出されます。
しかし、経正は、武士たる平家の出。心ならずも戦に生きる中でも、覚正の形見とも分身ともいえる琵琶の名器「青山」ともに生きます。心は常に覚正と琵琶にありました。
運命と人生はままならぬもの。そんな当たり前といえば当たり前のことですが、全編にそんな葛藤と覚正への敬慕があふれている、見事な作品でした。
特に歴史小説好きの方にお勧めします!