「この人殺し!」

音那憂(初海)

ぼくのなかをすくうもの

「この人殺し!」



 

 ぼくのみみにはたしかにそうきこえた。


 

 そうだ、ぼくはひとごろしだ。なぜなら、ぼくはぼくをころしたからだ。

 

 ぼくはずっとふかいふかい、くらくてふかいうみのそこにしずんでいる。ぼくのたましいはそこからぬけだすことはできない。ぼくがそうさせているからだ。

 

 ぼくのたましいだ。ぼくがどうこうしようがほかのやつらにはかんけいない。

 

 ぼくはひとごろしだ。ぼくはぼくのたましいをころした。もう、なにもできないえたいのしれないからだは、ない。たましいがないのだから。

 

 ぼくはふとんのなかで想像する。ぼくのたましいがいつかじゆうになり、くらくてふかいふかいうみのそこからはいあがってくることを。ははは。そうはさせるか。ぼくはひとごろしだ。



 

 ぼくはしんだ。


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「この人殺し!」 音那憂(初海) @muniiiai

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